「手取りを増やすために石破首相を支持する」と言えばいいのに…石破政権にこっそり手を貸す国民民主の狡猾さ
■重要な政治選択を無視しようとしている 選挙直後に玉木氏と同様の発言をしていた日本維新の会の馬場伸幸代表は、30日に立憲の野田氏と会談した際「大義や具体的な改革案がなければ与することはない」と述べるにとどめた。野田氏への投票にはかなり否定的だとみられるが、それでもいったんは持ち帰って検討するとした。 最低でも現時点では、この程度の対応が必要だろう。石破氏と野田氏のそれぞれから、首相指名選挙での投票を呼びかけられたなら、まず双方の話を聞いた上で党に持ち帰って検討し、もし決選投票となった場合に石破氏と野田氏のどちらに投票するか、党としての態度をきちんと表明するのが、議会人としてのあるべき態度だ。 にもかかわらず国民民主党は、首相指名選挙という極めて重要な政治的選択を避けて、逃げようとしていると断じざるを得ない。 ■「石破」と書くのも「野田」と書くのもリスクが大きすぎる 国民民主党にとってこの首相指名選挙での判断が、極めて難しいことは理解できる。 同党の支持基盤である連合は、立憲民主党と国民民主党が連携して、自民党に代わる政権の選択肢となることを求めている。今回の衆院選でも、両党の選挙協力によって当選した議員もいる。石破氏に投票すると決めた場合、党内のハレーションは相当大きいはずだし、何より来夏の参院選に影響が及ぶ可能性がある。多くの議員が地元に帰れば、自民党と直接対峙するからだ。 一方で今の国民民主党は、所属していた議員の多くが立憲民主党に合流し、それを拒んだ議員によって作られた政党だ。メディアではいまだに立憲と同規模の政党のように扱う向きがあるが、今回の衆院選で立憲民主党と国民民主党の議席差は120議席に達している。そんな国民民主党が今さら立憲と協力するのは、特に玉木氏にとっては、過去の経緯を考えても難しい。 さらにややこしいのは、小政党と化して以降の国民民主党には「アンチ立憲」のネット右派に近いスタンスを持つ支持者が、玉木氏個人のファンという形で増えつつあるらしいことだ。国民民主党が首相指名選挙で野田氏に投票すれば、こうした新たな支持層が一斉に離れる可能性もある。 「石破」と書くのも「野田」と書くのもリスクが大きい。同党が首相指名ではっきりとした政治的意思を示すのをためらう気持ちを、全く理解しないわけではない。