忘れられていたチェンバロの魅力を今に伝える名曲『田園のコンセール』【クラシック今日は何の日?】
クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。
プーランク『田園のコンセール』 チェンバロの魅力を今に伝える名伯楽
今日8月16日は、ポーランドのチェンバロ奏者・ピアニスト、ワンダ・ランドフスカ(1879~1959)の命日です。 彼女の最大の業績は、ピアノの普及によって忘れ去られていたチェンバロを現代に復活させたことです。 音楽研究者の夫アンリ・ルーの影響によってチェンバロに興味を持ったランドフスカは、24歳にしてチェンバリストとしてデビュー。チェンバロによるバッハ演奏の大家として活躍するほか、バロック音楽に関する教育者としての活動も始めます。これはまさに、今に至る“オリジナル楽器回帰”の先駆けといえそうです。 そのランドフスカからの委嘱によって作曲されたチェンバロのための協奏曲が、ファリャ(1876~1946)の『クラブサン協奏曲』と、プーランク(1899~1963)の『田園のコンソール』の2曲です。 中でも1927年に作曲された『田園のコンソール』は、チェンバロが活躍していた18世紀の精神を反映するかのような優雅な名作です。初演は1929年5月3日に、ランドフスカのチェンバロとピエール・モントゥー指揮、パリ管弦楽団によって行われています。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
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