《創業者の存命中は難しかった》コンビニ専業に進むセブン&アイHD苦渋の決断 “赤字事業”を抱える中間持ち株会社の会長には創業者の次男
“小売業界の巨人”セブン&アイ・ホールディングス(HD)が揺れている。外資による買収提案を受け、祖業であるスーパー「イトーヨーカドー」などの事業を分離すると発表した。再建を託されたのは創業家出身の伊藤順朗副社長(66)。これは何を意味するのか。コンビニ事業で同社を急成長させながら退任の道を選んだ鈴木敏文前会長(91)の胸中は──。 【写真】セブン&アイHD社長の井阪隆一氏やヨークHD代表取締役会長の伊藤順朗氏、セブン&アイHD前会長の鈴木敏文氏も
買収提案への対抗策として企業価値を高める必要
「他店が撤退しても、ここだけはなくならないと思っていました。以前はヨーカドーの売り上げ日本一の店でしたからね」 千葉県習志野市、新京成線の新津田沼駅近くにあるイトーヨーカドー跡地の近くで話を聞いた50代女性はそう話す。 業績不振が続くイトーヨーカドーの「閉店ラッシュ」が止まらない。 津田沼店が46年の歴史に幕を下ろした9月29日には、上板橋店(東京)も閉店。今後も2026年2月末までに30店舗以上を閉鎖する予定で、最盛期の182店舗が、93店舗まで減る計画だ。 イトーヨーカドーを運営する「イトーヨーカ堂」はこの8年で800億円の赤字を計上。親会社であるセブン&アイHDの収益は圧迫され、結果として外資からの“買収危機”にも晒されている。 8月に北米でコンビニ事業を展開するカナダのアリマンタシォン・クシュタール社から約6兆円の「買収提案」を受け、翌月には7兆円に引き上げた再提案を受けている。 対抗するには不採算事業の整理などで企業価値を高めなくてはならない。同社は、「コンビニ専業」に進むという大きな決断を下した。
10月10日、井阪隆一社長はオンラインで会見し、イトーヨーカ堂やロフト、デニーズなど非コンビニ部門を分離し、新たな中間持ち株会社「ヨーク・ホールディングス(HD)」の下に置くと発表。2025年度には、ヨークHDの大半の株式を売却するための外部企業の選定作業を進める計画だ。 社名も「セブン-イレブン・コーポレーション(仮)」に変更すると発表した。『経済界』編集局長の関慎夫氏が言う。 「買収提案の前からセブン&アイHDは“物言う株主”にスーパー部門の抜本改革を求められていた。中間持ち株会社化はそれに応える組織改革ですが、傘下に入るのは赤字企業が多い」