『FF14』パッチ7.1“未知との邂逅”吉田P/Dインタビュー。“エコーズ オブ ヴァナ・ディール”ではネットミーム化したエピソードも再現!? 滅アライアンスレイドでは新たな仕組みを導入
オンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV』(FFXIV)の最新大型アップデートとなるパッチ7.1“未知との邂逅”が、2024年11月12日に公開される。 パッチ7.1では、『黄金のレガシー』から続く新たなメインストーリーを始め、『ファイナルファンタジーXI』(FFXI)とのクロスオーバーコンテンツとなるアライアンスレイドシリーズ“エコーズ オブ ヴァナ・ディール”の第1弾“ジュノ:ザ・ファーストウォーク”がスタート。さらに24人のプレイヤーで挑む新たな高難度バトル・滅アライアンスレイドの“滅暗闇の雲激闘戦”など、多岐にわたってコンテンツが実装される。 本記事ではそんなパッチ7.1公開に先駆けて、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏にインタビューを実施。“エコーズ オブ ヴァナ・ディール”の注目ポイントや、滅アライアンスレイドで追加される新たな仕組みなど、さまざまな話をうかがった。なお、インタビューは、第84回プロデューサーレターLIVE(PLL)“パッチ7.1実装コンテンツ特集Part2”の放送前に実施されたもので、取材後にPLLの内容を一部反映している。その点を留意したうえで読み進めてほしい。 【記事の画像(14枚)を見る】 吉田直樹 氏(よしだ なおき): スクウェア・エニックス 取締役/執行役員 クリエイティブスタジオ3 スタジオヘッド。2010年12月に『ファイナルファンタジーXIV』のプロデューサー兼ディレクターに就任。現在、『ファイナルファンタジーXVI』のプロデューサーも兼任している。文中は吉田。 パッチ7.1はさまざまな“未知”と交わるイメージ ――今回のインタビューは『黄金のレガシー』リリース後としては初となります。まずは7.0公開後のプレイヤーの反響はいかがでしたか?: 吉田: 『黄金のレガシー』は、つぎの10年に向かってのいろいろなチャレンジの1歩目で、とくにバトルコンテンツを中心に「プレイヤーの皆さんが感じるエキサイトメントを改めて取り戻す」という目標を掲げてやってきました。7.0時点ではまだ雰囲気を感じられる程度だったと思いますが、歯応えのあるエキスパートダンジョンや、新しい仕組みの新ジョブなど、思っていた以上にポジティブに受け止めていただけたと思います。 ――確かに、全体的にバトルの歯応えが増した感覚がありました。 吉田: とはいえ、ピクトマンサーに関してはオーバーパワーだったなと……。もちろん、“至天の座アルカディア:ライトヘビー級”の実装に合わせてナーフ(弱体化)する案も出ていて、作業的にはそのほうが楽だったのですが、最終的には全体を上方調整してジョブ間のバランスを並べたほうが、プレイヤーの皆さんにより楽しんでもらえるだろうと判断しました。 その調整をすることで零式のDPSチェックが緩くなるのは理解していましたが、あわててボスのHPを調整し直した結果、クリアーするのがきびしくなってしまうのでは本末転倒です。今後に第2弾、第3弾のレイドが控えていることを考えると、たくさんの方々に気持ちよく、そして楽しくクリアーしてもらったほうが全体としてはポジティブになるのではないかと。もちろん、ちょうどいいバランスであるのが理想ですが、結果的にはたくさんの人に楽しんでいただけたのではないでしょうか。あと、いままでにないレイドの雰囲気であったことも好意的に受け取っていただいたので、全体のチャレンジとしてはすごくうまくいったと思っています。 ――ストーリーに関しての反響はいかがでしたか? 吉田: メインストーリーに関しては、一度目のクライマックスである『暁月のフィナーレ』があった以上、制作に入る時点で「ある程度評価は分かれるだろう」と覚悟していたこともあり、賛否両論だったことに関しては、そこまでの焦りはありません。これは内容が、というよりも、『暁月のフィナーレ』は旧『FFXIV』から積み上げたものを一挙に終わらせたからこそ得られたカタルシスだったわけです。それに対して『黄金のレガシー』は、また新たなカタルシスに向けてドミノを1個ずつ並べていく段階なので、『暁月のフィナーレ』と比べるとどうしても「物足りない」という声は出てくるだろうと予想していました。 また『黄金のレガシー』では、トラル大陸を舞台にたくさんの種族と部族を“つなぐ・知る”物語にするうえで、プレイヤー自身がいろいろな価値観に触れるというところを大切にしたいと考え、それを序盤の段階で丁寧に描きました。ただ、僕の中では「やり過ぎたかな」という反省がありまして……。知る・考える旅のための要素のほとんどをメインストーリーに集約させてしまい、序盤の物語のテンポが遅くなってしまったかなと。もちろんすべての物語を見ていただきたいという想いはありますが、もう一段勇気を持って、一部をサイドクエストという形で分散させれば、もう少し序盤のテンポがよくなったはずです。この反省点は、つぎに活かしていきたいと思っています。 ――登場キャラクターについては、ウクラマトについていろいろと議論されていますが、こちらについてはいかがでしょうか? 吉田: 序盤に描かれるウクラマトの空回り感というか、身内に対して持っているコンプレックスの部分は、キャラクター作りではそれほど珍しいパターンではありません。たとえば、アルフィノも登場したばかりのときは、高慢で理想ばかり言っており、どちらかと言えば嫌われていたキャラクターでした。ただ、アルフィノはそこから挫折する過程をしっかり描いて、薪拾いからやり直して徐々に這い上がっていく姿をプレイヤーが見ているからこそ、いまのアルフィノができあがっているのです。 一方で、ウクラマトはいきなりコンプレックスを抱えた状態で登場し、さらに序盤の物語でアルフィノのような描きかたができなかったので、どうしても感情移入が中途半端になってしまったと反省しています。結果、彼女には悪いことをしたと思っています。本来なら『黄金のレガシー』よりもっと前の段階で、彼女を登場させたほうがよかったなと。 6.xシリーズは“ヴォイド”の話で占めていたので、彼女のエピソードを入れる余地がなかったのは確かなのですが、それでもここはペース配分をもう少し調整して、1パッチ丸ごとウクラマトのスタート編の物語を描いてもよかったかもしれません。ここも反省点として受け止めて、つぎに活かしていきたいとチームの中で話し合ったポイントです。 ――確かに6.xの早い段階でウクラマトが登場して、もう少し彼女のバックボーン的な掘り下げと成長が描かれると、さらに感情移入がしやすかったかもしれません。: 吉田: ほかにも、光の戦士の立ち位置にも賛否の意見をいただきました。ただ、この先も長く光の戦士の物語を描く中で、『暁月のフィナーレ』までにあれだけのことを成し遂げたからこそ、“人を導く”という側面も絶対に出てくると思っています。この“人を導く”という部分は、主人公の素質としても描くべきテーマだと思っているので、今回はあえてそこに焦点を当てた形にしています。 もちろん、光の戦士がずっとあの立ち位置になるわけではありません。いずれまた、すべてを背負って進んでいくタイミングが来ますが、新章の最初からそれを全部背負うのは、いくら何でも物語としてもまとまりがなくなってしまうので、その緩急だと思っていただければ幸いです。 ――それを聞くと7.1以降はどのようなストーリーが描かれていくのかがすごく気になります。ちなみに、6.xシリーズでは6.1からヴォイドをテーマにした独自のストーリーが展開しましたが、今回は『黄金のレガシー』の続きとなる物語が描かれる形でしょうか? 吉田: 過去の例ですと、好評をいただいた『漆黒のヴィランズ』も、クライマックスはパッチ5.3でした。それに似たパターンに戻すイメージです。なお、いただいたフィードバックの中に「ゾラージャの過去をもっと語ってほしい」という声もありましたが、これまでのx.1以降のストーリーと同様に、そういった7.0で描き切れなかった部分も語られていくと思っていただければ大丈夫です。 プリザベーションという組織はそもそもなんだったのか、そして鍵はどこから来ているのかなど、『黄金のレガシー』の物語で残された謎に、少しずつ迫るところからスタートするのが7.xシリーズ前半になります。ですので、皆さんが疑問に思っていることや、「ここを描いてほしかった」という部分はしっかりと描いていく予定です。それに加えて、おそらくあまり予測していない方向に物語が進んでいき……。「また新しい物語が始まった」というのを少しずつ感じていただけるのではないかなと思っています。 ――7.1のパッチタイトルは、日本版が“未知との邂逅”、英語版が“CROSSROADS”となっていますが、このタイトルに込められた意味を教えてください。: 吉田: 『黄金のレガシー』自体が、路(みち)を切り拓く、路を作るというテーマがありました。パッチ7.1でもさまざまなキャラクターがそれぞれの路を歩み始めるのですが、今回はとくに、未知なるものが何かに吸い寄せられるかのように集まってきて、それぞれが光の戦士を中心に交わるといったイメージですね。 たとえば、“エコーズ オブ ヴァナ・ディール”は『FFXIV』の光の戦士からすると未知なるものですし、滅アライアンスレイドという新たなコンテンツも、プレイヤーの皆さんから見ても未知なるものです。それらがいろいろな方角から降りかかってきて、光の戦士を中心に交わる。それを日本語と英語の両方でうまく表現できたかなと思っています。 ――なるほど。日英両方のタイトルをあわせて見ると、よりパッチ7.1のテーマが理解できるわけですね。 吉田: 今回は日本語のパッチタイトルが先に完成して、なぜこのタイトルにしたかをローカライズチームに話し、そこから何案が出てきた中で“CROSSROADS”がいちばんしっくりきたため、英語タイトルも決まりました。“交わる”という部分がけっこう大きなポイントですね。 少し脱線しますが、これまで日本語のパッチタイトルを作り過ぎたせいか、僕の中の“中二的な単語のバリエーション”が減ってきていて……。案を出しても「それ、前にも使っています」みたいな(笑)。 ――パッチ2.1~7.1までのパッチ数を考えると、たしかにその苦労は計り知れません(笑)。 吉田: パッチタイトルについては『新生エオルゼア』のときから、「MMORPGのメジャーパッチは単なるバージョンアップではなく、それぞれタイトルを付け、作品として楽しんでいただこう」と思ってやってきました。タイトルを付けることで単なるアップデートでなく、ひとつの拡張・DLCであるかのように感じていただけますし、プロモーションもしやすくなるだろうと。だからこそ、それぞれのパッチにタイトルを用意してアートも作ってきました。それ自体はすごくよかったと思っていますし、今後も続けていくべきだと思ってはいるのですが、ネーミングが本当に限界で……。強くてインパクトがあって、なおかつワクワクする単語のバリエーションは、自分の中でもそれほど多くなく、最近はすごく苦労しています(苦笑)。 “エコーズ オブ ヴァナ・ディール”で『FFXI』の伝説エピソードが蘇る!? ――7.1のパッチアートは、すごくバラエティーに富んでいて、まさに“CROSSROADS”というタイトルを表しているなと感じました。: 吉田: 今回のパッチアートはタイトルに即して、あらゆるコンテンツが押し寄せてくるという形にしたかったので、ボスのオンパレードという構成にしています。画としても、コンセプトとしてもまとまっているのですが、ひとつひとつのボスを見るとじつはまったくまとまっていないという(笑)。 ――いちばん驚いたのが、『FFXI』のプリッシュ(Prishe)が描かれていて、しかもなぜかバクージャジャと対面しているということでした。イメージとしては、“リターン・トゥ・イヴァリース”のときのラムザのように、彼女が“エコーズ オブ ヴァナ・ディール”の物語を引っ張っていくキャラクターになるのでしょうか?: 吉田: ストレートにそう思っていただいて大丈夫です。彼女の持つあのパワーでどんどん物語を引っ張ってくれます。さらに今回は、プリッシュのボイスも用意されています。ボイスはクエスト全編に入っているわけではなく、基本的にバトルボイスになりますが、いいテンションで暴れてくれると思います。 そして、ほかにもまだ登場人物がいるのですが、彼らがどう絡んでいくのかにも期待していただければうれしいです。皆さんの反応が楽しみでもあり、怖くもあります(笑)。 ――これまでのアライアンスレイドでも、さまざまなゲームとのクロスオーバーが展開されましたが、今回の“エコーズ オブ ヴァナ・ディール”は同じ開発スタジオのタイトルかつ、同じMMORPG作品とのクロスオーバーコンテンツになります。『FFXI』の舞台であるヴァナ・ディールを『FFXIV』に落とし込むにあたって、いちばん気を配ったところはどこでしょうか? 吉田: いまも多くの方に支えられて続く『FFXI』ですが、当時の熱狂も本当にすごかった。MMORPGの黎明期ですし、何もかもが「遊び」につながっていた時代。とくに先行する『エバークエスト』が英語ベースのゲームだったこともあり、『FFXI』こそMMORPGの原点という日本のゲーマーもたくさんいらっしゃいます。 MMORPGも『FFXI』も進化を続け、後発の『FFXIV』ももちろんそうですが、時代やお客様に寄り添ってアップデートがくり返され、いまでは多くのゲーマーのライフスタイルに合致するようになっています。ですが、あの当時はヴァナ・ディールという世界にログインしていること自体が熱狂でした。おもしろくて離れられない。そういうゲームデザインでもありました。だから、『FFXIV』の開発チームには、全員とは言いませんが、『FFXI』で人生を踏み外しかけた子たちが多いんですよ(苦笑)。でも、その熱狂がゲーム開発者になっている原動力だったりもするので、おもしろいものですね。 ――私たちもそうです(笑)。 吉田: ありがとうございます(笑)。そういったスタッフが、当時『FFXI』で経験したエピソードやインパクトを“エコーズ オブ ヴァナ・ディール”で表現したいと考えて取り組んでいます。とはいえ、『FFXI』を知らない人でも100%楽しんでもらえるように作っていて、そのさじ加減はかなり苦心した部分です。 ――単に『FFXI』のキャラクターやボスが出てくるだけではないと。: 吉田: 『FFXI』はMMORPGだからこそ、当時コミュニティの中で起きた出来事が伝説として語り継がれたりしています。そういった、いわゆるネットミームになったエピソードも微妙に再現されていたり……。 ――おお、それは楽しみです! 吉田: 『FFXI』を知らない方も、そこで話題に出たワードをネットで調べて、当時のエピソードを見ていただけたらなと。『FFXI』はストーリーやキャラクターなどゲームそのものもすばらしいですが、コミュニティ内でのエピソードも『FFXI』ならではの魅力だと思っているので、それを含めて“エコーズ オブ ヴァナ・ディール”をプレイして感じてもらい、改めてヴァナ・ディールという世界に興味を持って「『FFXI』を遊んでみようかな」という気持ちになってくれたらうれしいですね。その想いはすごく強いです。 さらに『FFXI』に対する想いをお話ししますと……じつは僕が旧『FFXIV』を担当したときに、『FFXI』のコミュニティの皆さんがどういった発言をされていたかも追っていました。当時は、旧『FFXIV』がMMORPGとしてリリースされるということで、「『FFXI』の正統進化の続編がくる」といったイメージを持った人も多く、コミュニティが分断されると感じられている方も多いと思っていたのです。実際に『FFXI』プレイヤーで旧『FFXIV』に移行された方も多かったのですが、旧『FFXIV』のリリース当初はあの惨状だったので、そこで『FFXI』にも戻らず、ゲームを辞めてしまったという方もいらっしゃった時期でした。 ですから『FFXI』が本当に好きで応援してくださっている方からすると、「旧『FFXIV』がなければもう少し違った未来があったかも……」という思いを持っている方がいらっしゃるというのは、コミュニティの皆さんの反応を見ていても感じるところがありました。さらにはそういったこともあって、「吉田は『FFXI』にちょっかいをかけないでほしい」というお声も拝見しました。 とはいえ僕としては、ナンバリング作品として大先輩である『FFXI』に、なんとしても恩返しがしたいという思いがあります。それに加えて、『FFXI』がサービス開始から20周年という節目を超えたタイミングであり、開発チームの中からも「作りたい」という声が非常に多かったので、今回思い切って……ということになりました。 ――そういった想いが開発につながったのですね。: 吉田: 現在の『FFXI』チームも(同じクリエイティブスタジオ3として)隣にいるので、監修もしっかりやってもらいながら、想いはいろいろと詰め込んだつもりです。どうしても「『FFXIV』に思うところがある」という方がいらっしゃるのは重々承知していますが、これでまた『FFXI』に興味を持ってもらって、「『FFXI』もやってみようかな!」という方や、「ヴァナ・ディールの世界を覗きに復帰してみよう」という方が出てくれたら、これほどうれしいことはありません。 ――編集部にも“エコーズ オブ ヴァナ・ディール”の実装を聞いて、『FFXI』に復帰したプレイヤーがいます。 吉田: “エコーズ オブ ヴァナ・ディール”については、プレイヤーの皆さんにとにかく楽しんでいただけるコンテンツにしました。話題になっているところはネットで検索していただいて、「こんな話があったのか」と、これまでにないような楽しみかたができると思います。「ここにあるオブジェクトはこことつながっていて……」とか、「このセリフは、じつはこのときの……」とか、いろいろとつなげてみていただけると、より楽しめると思います。 ――それは早くプレイしてみたいです! 吉田: 『FFXI』が22年以上も続けてこられた歴史があるからこそ、初めてそういったことにも挑戦できるコンテンツになったかなと。ちなみにマップに関しても、開発スタッフから「転送ポイントがなぜこのあたりにないの?」と声が挙がったら、「いや、ジュノの場合はここなんだよね」という議論が展開するぐらい、こだわって作られています。 ――ちなみに“エコーズ オブ ヴァナ・ディール”で使用される『FFXI』の楽曲は、原曲をそのまま使われているのでしょうか?: 吉田: はい。アレンジバージョンを聴きたいという声ももちろんあると思いますが、まずは懐かしさとともに“再現された新しさ”を感じてもらいたいなと思っているので、無用なことはせず、まっすぐ原曲を使わせていただいています。 ――第1弾となる“ジュノ:ザ・ファーストウォーク”では、ジュノ大公国のジュノ上層をイメージしたフィールドのスクリーンショットが公開されています。ここはバトルが行われるフィールドになるのか、それとも“ミソロジー・オブ・エオルゼア”のオムファロスに近いような場所になるのか、どちらでしょうか? 吉田: 戦うだけの場所ではない……とお伝えしておきます。イベントマップとしても入れるようになっていますし、そこで展開する物語もあります。ただ、バトル中のエリアと完全同一ではありませんので……これ以上は、ぜひご自身の目でお確かめください! ――ジュノからどのような経路で、闇の王の居城であるズヴァール城の王の間まで行くのかも、すごく気になります。 吉田: それを説明しようとすると、なぜ『FFXIV』の惑星アーテリスの原初世界にヴァナ・ディールの一部が出現しているのか、なぜプリッシュたちが現れたのかという根幹の部分に関わってくるので……。その取っ掛かりのストーリーは、“ジュノ:ザ・ファーストウォーク”で語られます。まだ第1弾であり、すべてが明かされるわけではありませんが、物語のトリガーを引く人物やその目的などを知ると、この先のアライアンスレイドでどの敵が出てくるのかといったことが見えてくるかもしれません。 当時プレイしていた人には懐かしさを、これから『FFXI』を知る人にもその魅力を提示できるようにかなりコストをかけて作っていますので、ぜひ実際にプレイしてみていただけるとうれしいです。 滅アライアンスレイドには新たなボーナスの仕組みを導入 ――パッチ7.1では、新たな極討滅戦として“極エターナルクイーン討滅戦”が追加されます。すでにノーマルの時点でかなりの歯応えがありましたが、極はどれほどの難易度になるのでしょうか? : 吉田: すでに調整は終わっていて、人によると思いますが、僕はそこまで難しいという感覚はなかったです。ただ、いわゆる“7.0のラストバトルの極バージョン”ですから、尺が長めのボスではあるので、クリアー時に獲得できるトークンは2個になっています。これは難しいからというよりは、コンテンツクリアーまでの時間の長さで決めた形です。 ――ノーマルバトルを鑑みるに、どちらかというと脳トレ寄りではなく、フィジカル寄りなのかなというイメージがあります。 吉田: フィジカル寄りだとは思います。あとはマップがいままでにない向きに回転したりするので……。 ――ノーマルの時点でも宙に浮いたり、迫る壁の穴を見つけたりといった要素がありましたね。 吉田: 攻略法は完全固定というよりも、“複数あるフェーズの中でどのフェーズが先に来るかはその時しだい”という作りになっています。ですので、フェーズごとの解法を覚えておいて、どれが来ても対応できるようにしておくという感じです。僕の印象からするとそこまで難しくないと思いますが、どうでしょうか……。ぜひ実際に挑戦して確かめてみてください。 ――パッチ7.1ではまったく新しいバトルコンテンツとして“滅アライアンスレイド”も実装されます。改めて、この滅アライアンスレイドを作るに至った経緯をお聞かせください。: 吉田: そもそも、拡張パッケージ発売直後のパッチx.1は、拡張(x.0)の作業が膨大であるがゆえに、先々から準備をする期間が取れないパッチです。これまでのx.1も、ほかのパッチと比べるとボリューム的に少なく感じられるケースが多かったと思います。ですが今回はあらかじめそれを想定して、6.xシリーズから少しずつ仕込みをして、“滅アライアンスレイド”という新しいコンテンツを作っていました。 もともと7.xシリーズでは、多くのプレイヤーで楽しんで盛り上がれるコンテンツをメインにやっていこうという方針だったので、24人で挑む高難度バトルを1回やってみようというところがスタートです。ただ、コスト的にも贅沢に新規モンスターを作れるわけではなかったので、過去に登場した大型モンスターを起用することが決まって、そこで暗闇の雲が選ばれています。 ――暗闇の雲を選んだいちばんの理由とは? 吉田: いろいろと候補が挙がっていたのですが、“クリスタルタワー”の暗闇の雲は“魔王級妖異”というわりに波動砲しか使わないボスでした(苦笑)。ですから真なる力として新たな要素を入れやすく、現場からも「やりたい」という声があったのです。 ――たしかにどれだけ暗闇の雲のイメージが覆されるのか楽しみですし、今後の滅アライアンスレイドでどのような敵が登場するかも楽しみです。 吉田: ただ、今後の滅アライアンスレイドの計画はまだ立てていません。今回の“滅暗闇の雲激闘戦”をプレイしていただいて、「おもしろかったから、つぎの滅にも期待したい」なのか、「24人の高難度バトルはもういいや」となるのか、そういった皆さんの反応を見てから考えようと思っています。 また、24人での高難度バトルは作り手のスキルも求められるので、若手のスタッフにすべてを任せてできあがるものではなく、しっかりと時間をかけて作らないといけません。ですから2パッチに1回などといったように、レギュラーコンテンツ化するという計画はまったく立てていないのですが、今回はかなりおもしろく作れたと思っています。 ――“滅暗闇の雲激闘戦”はどのようなレギュレーションで挑むのでしょうか?: 吉田: まず“滅アライアンスレイド”という名前からの印象で、タンク×1、ヒーラー×1、DPS×5の構成だと思っていらっしゃる方が多いのですが、バランスはタンク×2、ヒーラー×2、DPS×4のパーティ構成で調整しています。年末に向けて固定パーティを募集しようとされている方は、こちらのパーティ構成で募っていただけると。 ――タンクは合計6人になるわけですね。 吉田: はい。また、A・B・Cのそれぞれのアライアンスでギミックに対応するというより、タンク×6、ヒーラー×6、DPS×12のプレイヤーでギミックを突破していくというイメージです。 ――なるほど。アライアンスレイドダンジョンほど、アライアンスごとの役割の区別がないイメージでしょうか? 吉田: 一応、クリアーするための道筋としてアライアンスごとに分けやすく作ってはいますが、8人のアライアンスごとに動くわけでなく、さらに4:4に分かれる……といった感じのギミックもあって、いままでにないパターンかなと思います。 ――“滅暗闇の雲激闘戦”が発表された後に、X(旧Twitter)上ではすでにいろいろな解法やマクロを予想している人も見られました。 吉田: ギミックひとつひとつの難度は、零式1層ぐらいだと思います。ただそれを24人でしっかりと役割分担をして……と考えると、体感としてはもう少し歯応えを感じられるものになっているかなと。もちろん、パーティごとに対応するギミックにおいて、ひとりのミスで全滅してしまうものが多いと萎えてしまうので、個人ギミックが多めにはなっています。ただ、その個人ギミックを失敗すると、ほかの人に攻撃が行くこともあります。さらに暗闇の雲といえば、第一世界側の暗闇の雲(“希望の園エデン:再生編1”で登場)もいますので……(笑)。 ――あのパネルのギミックが思い浮かびました(笑)。: 吉田: Aさんに「右のパネルを踏んでおいてください」みたいな。それを各所でやるので、マクロだけだと動きを確定させるのが難しいかもしれません。クリアーまでみんなで積み上げていくという部分は、当然8人レイドよりもはるかに難しいので、それを加味すると全体的な難度は零式2層ぐらいのイメージになるかなと思います。 ――突入方法としては、レイドファインダーから挑む形でしょうか? 吉田: はい、レイドファインダーに対応しています。先ほどお話したように、タンク×2、ヒーラー×2、DPS×4の構成でマッチングするようになっています。もちろん、パーティ募集も使えて、事前にパーティ募集で組んで挑む場合は、ほかのコンテンツと同様に自由なロール構成で挑めます。ちなみに24人用コンテンツですが、最低12人で突入できるようにもなっています。ただ、さすがに12人だとクリアーできないかなと……。本当に新しい試みなので、ぜひ24人で思い切って楽しんでください。 ――報酬はどのようなものが用意されているのでしょうか? 吉田: 今回は、かなりの報酬を用意しています。極などでおなじみのトークンシステムも採用しており、クリアーするごとに必ずトークンが得られます。それ以外の報酬はマウントが2種あって、ヘアカタログや、アイテムレベル(IL)730の防具一式もあります。防具のデザインはかなり悪魔チックでかっこいいものになっていて、すべて染色も可能になっているので、ぜひ獲得していただければ。 ――“至天の座アルカディア零式:ライトヘビー級”で獲得できる防具と同じILの装備が手に入るのですね。 吉田: いつもは零式4層まで挑戦していないけれど、極討滅戦~零式2層ぐらいの難度で「みんなでできるなら行こう」という人たちが、高いILの装備を手に入れるチャンスでもあるので、ぜひチャレンジしていただきたいです。防具はトレード不可になっていますが、一部の報酬はトレード可でマーケットでの取引もできるようになっています。報酬をギルに変換できることで、くり返し何度も挑もうというモチベーションにもつながるかと思います。 あとは新しい仕組みとして、初クリアー者がいると人数ぶんのボーナスがかかるようになっています。最初は当然、全員が初クリアーになると思うので、そのときはごっそりとアイテムを獲得できるという感じです。 “禁断の地エウレカ”や“南方ボズヤ戦線”などもそうなのですが、あとから挑もうという人たちのクリアーを手助けしようとコミュニティ活動をされている方もいらっしゃいますので、そういった人たちがモチベーションを持って活躍できるように、新たなシステムを入れさせていただきました。 ほかにも今回初の試みとして、特定のコンテンツに“リミテッドタイムボーナス”という、サーバー時間によって報酬が増える新しい仕組みを入れています。もちろん、ボーナスを入れることで「ボーナスがかかっていないときは行かない」という声が出る可能性もあるのですが、それ以上に「ボーナスがかかっているから行こう」となって募集も立ちやすいかなと。このリミテッドタイムボーナスは、DC(データセンター)ごとに時間をずらして運営するので、「いまはMeteorでボーナスが発生しているからMeteorに移動して募集しよう」といったように、データセンターを移動しながらコンテンツに挑んでもらえたらよいかと思います。 このリミテッドタイムボーナスは、ワールド間テレポやDCトラベルがきれいに動いているからこそできる仕組みです。ボーナス中は通常よりもレアアイテムが直接ドロップする確率が高くなるので、ボーナスを狙って積極的にチャレンジしてみてください。 ――ワールドをまたいだコミュニティがより活性化しそうな試みですね。 吉田: 報酬もたくさん用意しましたし、くり返し遊んでいただくモチベーションという部分にも気を配って作りました。なにより滅アライアンスレイドは24人できれいにクリアーできるとすごく気持ちがいいと思うので、ぜひ挑んでほしいです。またプレイ後はぜひフィードバックをお寄せいただけるとうれしいです。「24人用コンテンツでこの手のギミックは勘弁してほしい」とか、「もっとやってくれ」とか、そういったプレイヤーのみなさんの声が、つぎの滅アライアンスレイドの可能性につながっていくかと思います。もちろん、リミテッドタイムボーナスといった新しい仕組みに関してのフィードバックもお待ちしております。 “絶もうひとつの未来”にはオリジナル演出も満載 ――パッチ7.1といえば、“絶もうひとつの未来”も注目度が高いコンテンツですが、吉田さんのチェックは終わった段階でしょうか?: 吉田: 僕のチェックは昨日終わりましたが、バランスの最終調整はギリギリまで続いています。残り3つのフェーズの数値を調整すれば終わりですね。 ――戦闘時間はこれまでと大きく変わらないイメージですか? 吉田: 短いということは絶対にないです。まだ最終調整中ですので、明確に何分くらいとは言いづらいのですが、これまでの絶コンテンツと同様に、長いことは長いです。コンテンツの長さも絶のチャレンジ要素のひとつだと思っているので、そこを変えるつもりはありません。 なお今回は、バトル中にリーンとガイアのボイスを用意していて、今回のために新録したボイスもかなりあり、ストーリーラインの見どころも多いです。あとは、ギミックを回避する猶予時間はしっかり取ってあるものの、ギミックが押し寄せてくるテンポが結構早いので、攻略をしているプレイヤーたちの練度が上がっていったときの手応えや感覚が、配信を観ている方々にも伝わりやすいかなと。オリジナルの演出もいっぱいですし、絶ならではの仕掛けもありますので、話し合いながら挑戦していただき、配信を観ている方も盛り上がっていただけたらうれしいです。 ――どのような演出が用意されているのかすごく楽しみです。少し話が変わりますが、第83回PLLでは大規模PvPコンテンツのバランス調整についてもお話されていました。今後、新たな大規模PvPコンテンツの実装予定はありますか?: 吉田: 本当はパッチ7.1で、大規模PvPコンテンツのときのみに使える専用のPvPアクションを実装したかったのですが、どうしてもバランス調整の時間が取れず、パッチ7.2に実装させていただくことにしました。そして7.2ではこれまでにあったルール・マップの再調整をしたうえで、コンテンツを復活させるという目標を掲げているので、それが落ち着いたら新たに大きいコンテンツを追加しようと話し合っています。ただ、企画自体は進んでいるのですが、規模がすごく大きくて、今シーズン中にやりきれるかどうかがまだ見えない状況です……。 まずは、いまあるコンテンツの中で閉じてしまっているものがあるので、それを再オープンさせてバランスを調整していくのが先になります。今回、PvP担当のスタッフも増やせたので、7.2ではこのではこの大型PvPコンテンツの調整をしっかりやっていこうと思っています。 ――ほかにも、パッチ7.1で予定されているPvP関連の調整内容をお聞かせください。 吉田: 7.1では、まだ実装されたばかりのヴァイパーとピクトマンサーを除き、ほぼすべてのジョブにPvPアクションが追加されます。たとえば、竜騎士はそのままのプレイフィールになるように調整していますが、黒魔道士はまったくの別ジョブになっています。あとはPvPコンテンツでの判定自体をリアルタイム寄りに作り直しましたので、よりアクションゲームに近い感覚で遊べるようになっています。攻撃が来たのを判断してから防御しても間に合うといったように、画とよりマッチする形で手触りがさらによくなったので、まずはそのあたりを楽しんでいただければと。 クリスタルコンフリクトでも各ジョブのバランスが変わるので、ジョブ間の強弱がリセットされるイメージです。これは次回のPLL(11月11日放送の第84回PLL)でお知らせする予定で、ランクマッチの仕様も変更されます。 ――けっこうガラッと変わるイメージでしょうか? 吉田: 次回からのランクマッチはDC単位で開催され、シーズンごとに持ち回りという形になります。これまでは全DCでランクマッチが行われていたのですが、今回のシリーズはMana、つぎはGaiaといったように、シーズンごとにランクマッチが開催されるDCが変わるので、DCトラベルを利用してランクマッチに参加するイメージですね。 ランクマッチが開催されるDCがひとつに絞られる代わりに、ランキングが1位から300位まで表示されるようになり、1アカウントにつき1キャラクターしかエントリーされないようになっています。簡単に言うと、リージョン全体のランキングになるということです。 ――それはプレイするモチベーションにつながりますね! 吉田: これまでもたくさんのプレイヤーの方々にランクマッチをプレイしていただいていましたが、どうしても日中にマッチングするDCに偏りが出ていて、四六時中ランクマッチを回したいという声もすごく多かったのです。それに応える形で、ランクマッチをDCで持ち回りにしてマッチングを1本化させることにしました。 まだ詳しいことはお話できませんが、この先PvPだけでなく、マッチング全般でいろいろとチャレンジしようと思っていることがあります。今回のランクマッチの仕組みはそれまでの暫定対応になる可能性が高いですが、今後もまだまだ新しい仕組みに挑戦していくつもりです。 ――実装を楽しみにしています! ではまとめに入りますが、2024年は1月の東京ファンフェスティバルから『黄金のレガシー』発売、そしてパッチ7.1のリリースとノンストップで走られてきた感があります。改めて2024年を振り返ってのご感想をお聞かせください。: 吉田: 2024年は、僕にとって「これ以上どうにもならん!」というぐらい走り回ってきた年だったので、さすがにしんどかったですね(苦笑)。医療従事者の皆さんの努力もあってコロナ禍も落ち着いたなかで、今年は本当に世界中、信じられない数の国を飛び回りました。 ――昨年の北米ファンフェスティバルから始まって、全世界のさまざまなゲームイベントで吉田さんが登壇されていた印象があります。 吉田: とても大変でしたが、世界中の光の戦士の皆さんとお会いできて、メディアの皆さんともお話をして、この10年の旅路を振り返ってのコメントや、この先の期待の声もたくさんいただいて、大きなエネルギーになりました。 その一方で『FFXIV』や『FFXVI』『FFXI』、そしてクリエイティブスタジオ3のタイトルだけでなく、スクウェア・エニックス全体として、お客様に楽しんでいただけるゲームを出せる状態にしていくのも、取締役としての自分の役目で、それと並行しながら日々、ゲーム作りをやっている状態です。この1年、そして来年のがんばりが、2~3年先の『FFXIV』やクリエイティブスタジオ3のタイトル、そしてスクウェア・エニックスのゲーム全体に絶対にプラスの影響を与えると信じているので、とにかく走り切れるところまではそれをやり切ろうというのが、いまの目標です。 ――くれぐれもお体にはお気をつけてください……。 吉田: ありがとうございます。日付も曜日もわかっていないくらいですが、「おお、まだ働けるもんだな」と感じています。同じ感覚を旧『FFXIV』のときにも感じたのですが、年齢が50を超えてもまだいけるもんだなぁと(苦笑)。 ――では最後に、次回のパッチ7.1で光の戦士の皆さんに期待してほしい部分、注目してほしい部分をお聞かせください。 吉田: これまでに何度もお話していますが、『FFXIV』がここまで成長させてもらったのは、やはりプレイヤーの皆さんやコミュニティの皆さんひとりひとりが、それぞれの遊び、それぞれの生活を作ってくださっているからだと思っています。今日はコンテンツ中心の話になっていますが、システムアップデートによってハウジングでもさらなる遊びやおもしろさが体験できるようになりますし、細かくフィードバックいただいているグラフィックスアップデートのキャラクターの微調整も、パッチ7.1~7.2にかけてやっていきます。ほかにもグループポーズの細かい追加など、言い切れないぐらいのアップデートが用意されています。 皆さんがそれぞれ『FFXIV』にログインして遊んでいくひとつひとつのものが、パワーアップして遊べるパッチになっていると思いますので、いつもどおり焦らず、ワイワイと皆さんのペースで年末年始に遊んでいただければうれしいです。あと、“絶もうひとつの未来”に挑戦する皆さんは、くれぐれも健康に気を付けて無理なく攻略を進めていただければと思います!