石原元知事「担当者に一任」「記憶にない」連発 百条委「期待外れ」の声も
豊洲市場移転問題を調査する東京都議会の百条委員会は20日、石原慎太郎元知事への証人喚問を行った。石原氏は、1999年から2012年まで知事を13年務め、2010年には豊洲市場への移転を決断した人物。委員からは、交渉経過や責任を問う質問が相次いだが、市場用地取得の経緯などの詳細については「担当者に一任している」「記憶にない」を連発。傍聴者からは「期待外れ」など失望の声ももれた。
証言への反論に「だから何なんだ」
「(築地市場は)生鮮食品を扱う市場として不適格。アスベストも使われていて、働く人にも危険と感じた」と、1999年に築地市場を視察した際の印象を振り返った石原氏。前職の青島幸男元知事からの引き継ぎ書には「“豊洲地域に市場を移転する”との文言があった」として、就任直後から豊洲移転が既定路線だったと説明した。 2000年10月、石原氏は、地権者の東京ガスとの土地売買交渉が難航したため浜渦武生元副知事に一任。2001年7月には都と東京ガスとの間で基本合意に達している。この間の交渉内容について、石原氏は浜渦氏から「報告は聞いていない」と説明。任せっきりにせず、必要な報告を求めて適切に指示すべきでは、との問いには「都庁のような大きな組織ではいろんな問題があり、ものによっては司々(つかさつかさ)に一任せざるを得ない。複雑な交渉を浜渦(副知事)を信頼して任せた。私が細かい問題をいちいち立ち入って差配すべきではないし、する能力もない」と反論した。 2010年10月、石原氏は豊洲市場への移転を決断。記者会見では「議会が決めかねるならば知事が歯車を大きく回すしかない。それがリーダーとしての責任」と述べていた。 翌2011年3月末に締結された東京ガスとの市場用地の売買契約では、土壌汚染対策の追加負担を東京ガスに求めない「瑕疵(かし)担保責任の放棄」の問題が指摘されている。東京ガスの元工場だった市場用地には土壌汚染対策が必要だった。費用は最終的に約858億円にのぼったが、売買契約時に都は東京ガスに追加負担を求めず、同社の負担は約78億円にとどまった。残りは都が負担した。 契約締結前に瑕疵担保責任の放棄は了解していたのかとの問いに、石原氏は「東日本大震災後なので混乱しており、報告を受けた記憶はない」と弁明。初めて知ったのは2016年10月に小池百合子知事サイドが送った質問状だったとした。土地の購入額約578億円も含めて契約は巨額で、記憶がないということは考えられないとの反論には「だから何なんだ。記憶にない。それで何をすべきだったのか」と声を荒げる一幕もあった。 一方で、石原氏は豊洲への移転の決済を部下から求められた際、「土壌問題は解決できるかと報告者にたずねると『今の技術なら対応可能』ということだったので、移転を決済した」として、決裁者としての責任は認めるとした。 小池知事に対しては「豊洲への移転延期を議会にはからず決めたのは議会軽視」などと批判。すみやかに移転すべきだと主張した。
傍聴者「1時間じゃ仕方がない」
証人喚問は当初3時間程度で予定されていたが、石原氏の体調不良を理由に1時間に短縮された。会合が終わった瞬間、江東区からきた82歳の男性は「期待外れ。1時間じゃ仕方がない」と時間の短さに不満顔。 傍聴券を得るために朝6時前から並んでいたという中野区在住の女性音楽家(54)は「ご高齢で体調が優れないのは分かるが納得いかない。真実を話していただけていないように思えた」。埼玉県川口市から来た男子大学生(21)は、議員の質問に物足りなさを感じたといい、「記憶がない、で済むような質問が多いと感じた」と述べていた。 (取材・文:具志堅浩二)