“夏フェス卒業”を発表した、サザンオールスターズのここ10年の軌跡…「国民的ロックバンド」でありながら、「日本ロック史における最大の革命児」桑田佳祐の唯一無二のバランス感覚
最後の夏フェス、セトリを大胆予想?…
鈴木氏もいうように、デビュー以来サザンはヒット曲を連発していたが、反面やんちゃなところもあり、下ネタ満載の曲もあれば、桑田佳祐がテレビ番組で、安倍晋三元首相を曲名にもじった「アベーロード」を歌って政治を茶化すなど、正しくロックな活動をしてきたバンドである。それが1億人のリスナーを想定するような「国民的ロックバンド」にいつ変わったのだろう。 「1985年に『KAMAKURA』を出して、一時活動休止に入ります。それで1988年に『みんなのうた』を小林武史のプロデュースでリリースし活動再開。その後『真夏の果実』や『涙のキッス』など、派手なタイアップをやり出した頃からじゃないでしょうか。 1990年にアルバム『SOUTHERN ALL STARS』を出したんですが、僕はこれ以降を『メガサザン』と呼んでます。ちょうどレコードからCDに変わる時代で、サウンドもハイファイで高音がきいた、キラキラした音になるんですよね。 サザンのファンって、マニアックな人の割合は割と少なくって、あの曲が好き、当時の自分を思い出すからって人が多いんですよ。でもポップスってそういうものですよね?」 デビュー以来、コンスタントにヒット曲を飛ばしてきたサザンだが、「国民的ロックバンド」というイメージがよくも悪くものっぺらぼうな印象を与えてしまい、本来の評価がされていない面もあるのかもしれない。 「桑田は日本のロックに革命をもたらした『日本ロック史における最大の革命児』だと僕は思ってるんです。あの歌い方と、サウンド、歌詞のラディカリズム。 以前、村上龍が、洋楽しか聴かずに日本の音楽はダサいと思ってたらしいんですが、初期のサザンに出会って、これで『アメリカン・グラフィティ』ならぬ『ジャパニーズ・グラフィティ』って映画が撮れると思ったらしいんですね。 つまり、アメリカ人が昔から享受していたポップスを、日本人が初めて手に入れたって書いていた。そんな一番の革命をした人があいかわらず下ネタをやっている、そのバランス感覚がいいですよね」 最後の夏フェス出演となる9月23日の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」ステージは、全国300館以上の映画館でライブビューイングも実施される。鈴木氏の演出予想はこうだ。 「フェスの定番曲である『マンピーのG★SPOT』は必ずやると思うんですけど、見どころはその曲を歌うときにホースで水を撒くか、男性器の被り物をするか、それと渋谷陽一(『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』の元プロデューサー)への言及があるかどうかですね。前の『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』では被り物に『渋谷陽一』って書いてあったんです(笑)。それを見るのを楽しみに映画館に行こうかなと思ってます」 夏フェスは今年で最後だが、サザンオールスターズとしての活動は、桑田佳祐のポップスターとしての「業」がなくならない限り続きそうだ。昭和世代のオヤジでなくとも、もしかしたら最後となる「国民的バンド」の勇姿はぜひ目撃したい。 取材・文/高田秀之
集英社オンライン
【関連記事】
- TUBE前田亘輝「いくら夏が好きとは言ってもね…さすがに暑すぎて、もう5月から10月まで夏だよね(笑)」野外ライブをやめる時のツアータイトルは20年前から決めている!?︎
- 1976年、日本ロック史に残る“伝説の10日間”の内幕「サザンだってジーパンも汚いし、オシャレなんていうのとはほど遠かった」新宿ロフト創設者が証言
- サザンの曲で言えば『ミス・ブランニュー・デイ』。サイクルの早い文化であり消費される音楽…だからこそ、R-指定が考える「日本語ラップ」の蓄積とこれから
- 「おそらく(配信は)死ぬまでやらない」69歳、山下達郎のブレない矜持
- 「佐野元春さんはよくぞ『さよならレボリューション』って言ってくれたなって。もう70年代じゃないんだよって見せてくれた」(田家秀樹×重松清)