“夏フェス卒業”を発表した、サザンオールスターズのここ10年の軌跡…「国民的ロックバンド」でありながら、「日本ロック史における最大の革命児」桑田佳祐の唯一無二のバランス感覚
ロックのビートで老後を歌うという大実験
2015年にはサザンとして前作『キラーストリート』から10年ぶりとなるアルバム『葡萄』を発表した。 「この中では『栄光の男』と『はっぴいえんど』がよかった。『栄光の男』は長嶋茂雄の引退を立ち食い蕎麦屋で見て、最後はしょーもないセクハラで終わるって曲で、『はっぴいえんど』は自分の死のことを考えた“老後ロック”です。 桑田はスーパーロックスターだけど、歌詞にスーパーなところを出すことってほとんどなくて。老いぼれた昭和世代の男をロックにのせて歌うという、今まで誰もやったことがない実験をしているんです。 これは山下達郎も佐野元春もしない(できない)こと。シニアになってティーンエイジの恋を歌ってもいいけど、なんていうんですかね、ロックンロールとコレステロールの融合というか、ロックのビートで老後を歌うっていう大実験が今、行われているんですよ」 2021年に発売された桑田のエッセイ集『ポップス歌手の耐えられない軽さ』では「ライヴの楽しさと、お客さんあってこそのサザン」と綴っている。 「桑田は常に現役感覚というか、管理職のようにはならないところが魅力ですね。一線の営業マンとしてライブをやっていますよね。昔出版された本(『ブルー・ノート・スケール』)のあとがきで、インタビュアーの渋谷陽一は『ついに一回も桑田佳祐の口から、自分を絶対化したり、特殊化する発言が出なかった』と評しています。自分を絶対化しないからこそ、老後とか死とか、昭和世代の現実を歌う。 これから等身大の病気ロック、介護ロック、葬式ロックを歌えるのは桑田だけだと思う。まあ、本人はすごく健康に気を遣ってるでしょうけど」 サザンの最新シングルはドラマ『新宿野戦病院』の主題歌でもある「恋のブギウギナイト」と「ジャンヌダルクによろしく」、そして今秋には9年ぶりとなるアルバムの発売も予定されている。 「恋のブギウギナイト」は80年代ディスコを想起させるファンクチューン、「ジャンヌダルクによろしく」は70年代を彷彿させる横ノリのロックンロールだ。 昨年は「Relay~杜の歌」以外に「歌えニッポンの空」「盆ギリ恋歌」など新曲が3曲発表されている。鈴木氏はどう見ているか。 「バランスをうまくとっているなと思いますね(笑)。メッセージソング、ラブソング、コミックソング……など、どこかに偏らず、満遍なく1億人をおさえていく戦略を徹底してやっている。 僕としてはあまりバランスをとりすぎず、正五角形が四角形、三角形のバランスになってもいいから、もっとジャンルを絞っていただいてもいいぐらいに思いますが、でも今の曲にあれこれいうよりも、新曲を出し続けていること自体にリスペクトです」
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