「事業の真ん中に社会性が来る時代」 岐阜・老舗繊維メーカー、コンサル出身の5代目社長は本気
岐阜県羽島市の創業135年の老舗繊維メーカー・三星毛糸の敷地に足を踏み入れると、バーベキューパーティーもできる芝生広場、カモが羽を休める遊水池が目を引きました。 工場立地法で定められた緑地整備、社員の働きやすい環境づくりと同時に、地元地域の防災・避難の拠点として使うためだといいます。しばしば本業とは無関係そうなイベント会場にも早変わりします。 今回は、社会事業の視点を培って「サステナブルな家業」づくりに生かしている岩田真吾社長(42)の経営をうかがいます。
【岩田真吾(いわた・しんご)】 1981年愛知県一宮市生まれ。 1887年創業の素材メーカー「三星グループ」の5代目として、岐阜県羽島市を拠点に世界中を飛び回っている。 慶応義塾大学卒業後、三菱商事、ボストン・コンサルティング・グループを経て2010年から現職。 欧州展開や自社ブランド立ち上げ、ウール回収再生プロジェクト「ReBirth WOOL」などを進める。 2019年、ジャパン・テキスタイル・コンテストでグランプリ(経済産業大臣賞)受賞。 2022年、Forbes JAPAN起業家ランキング特別賞受賞。
事業に社会性をどう取り込んでいくか
2023年1月19日、屋外の肌寒さとは対照的に、三星毛糸のオフィスの一角は熱気に包まれました。アフガニスタンからの避難民で求職中の6人を招き、人材を求める地元の中小企業とのマッチングイベントが開かれていました。 難民が人材として活躍できるよう支援するNPO法人「WELgee(ウェルジー)」と三星毛糸が共催し、地元企業21社の関係者が駆け付けました。 これは、岩田さんがベンチャー企業と老舗企業の後継ぎによる共創の場として始めたプロジェクト「TAKIBI&Co.(タキビコ)」として7回目のイベント。岩田さんは、参加者たちにこう呼びかけました。 岩田:「この活動を重ねてわかったのは、いまの時代、事業のど真ん中に社会性が必要ということ。事業で得た利益の一部で社会貢献してきたCSR(企業の社会的責任)の時代とは違います。自分の事業に社会性をどう取り込んでいくかという意識で参加してください」