宮本勝昌がキャリア初の連覇達成 ライバル・片山晋呉を振り切るも「今までの優勝で一番苦しかった」
<ファンケルクラシック 最終日◇20日◇裾野カンツリー倶楽部(静岡県)◇6993ヤード・パー72> 妻の朋美さんとカップを掲げる宮本勝昌【写真】 ディフェンディングチャンピオンとして大会を迎えた宮本勝昌が、単独首位で最終日をスタート。5バーディ・1ボギーの「68」とスコアを伸ばして逃げ切り、トータル13アンダーで連覇を果たした。 1995年にプロ転向し、レギュラーツアー通算12勝、シニアツアー3年目にして通算6勝と多くの優勝経験はあるが、今回がキャリア初の連覇達成。これまでは「大会前に“ディフェンディングチャンピオン”というワードが出たときに、あまりプラス材料にはならなかった。ハンディキャップがもらえるわけではないし。あまり意識しすぎると、マイナス材料のほうが僕は多いと思っていて」と、連覇へのプレッシャーを感じることも多々あった。 しかし、今大会は「試合が始まってから(応援の)声がけはあったので、『ありがとうございます』と、もちろん言いますけど、ほとんど(連覇を)意識することなくできたかなと思っています」と、うまく気持ちをコントロールしながら、最後まで集中力を切らさなかった。 プレーについては「ヒット2本で4点ぐらい取った気分」と、幼いころに野球をやっていた宮本らしい表現で振り返る。この日は、朝から雨が降り気温も低いタフなコンディション。それに加えて「ゴルフの調子も良くない中だったので、ピンチの連続だった」と、耐えのゴルフが続く。前半はバーディを獲った「3番と9番しかチャンスがなくて」と、苦しい展開の中でも、その2ホールをしっかりモノにして、スコアをまとめてみせた。 同組で優勝争いを演じたのは、アマチュア時代からライバルで、日本大学ゴルフ部の同期でもある片山晋呉だった。1打差から始まり、差を広げれば、縮めたりと前半はし烈な争いを繰り広げた。「晋呉も自分で調子がいいと言っているだけあって、特に前半はいいショットが多かった。だから本当に展開だね。僕がパーパットとかピンチが多かったので、そこが決まっていなければ、あっという間に逆転されていただろうし」と、ライバルを脅威に感じながらも後半は、宮本が差を広げ片山を振り切った。 長年のライバルとの戦いは決して楽なことではない。「いままでの優勝の中で、一番、本当に苦しかったと思う。相手は晋呉だけではないですけど、レギュラー時代も晋呉と最終組で優勝争いをして、多分ぼくが勝ったことはないんですよ。何回か優勝争いの最終組をやっているんですけど、ほぼほぼ完敗ですね。もう10対0とか、そういう記憶しかない」と何度も辛酸をなめてきた。それだけに、“強敵”を相手に逃げ切った今大会の勝利は今後の自信につながったに違いない。 静岡県出身の宮本は、2年連続で地元Vを達成した。昨年に続き、今年もお父さんが応援に訪れてロープ外から見守っていた。「父も82歳ですからね。特にここのコースは、歩くのは結構タフだったんですけど、父も毎日一生懸命歩いて応援に来てくれてましたし、1回でも多く優勝を見せることができたらいいなと思いまして。それもちょっとした親孝行の1つかなと思っています」とアップダウンのある裾野カンツリー倶楽部で3日間帯同してくれたお父さんに恩返しができたこともうれしい。 「レギュラーのときはいつも『最後に優勝ができてよかったです』って言うんだけど、シニアはそうならないように。また次優勝した姿を父に見せられるように頑張りたいと思います」と、また来年もこの地元で輝かしい姿を見せたい。 今回の優勝でシニアツアーの賞金ランキングでは1位に返り咲きとなった。2年連続の賞金王が期待されるが、「賞金はもちろん頭の片隅ぐらいに置いときますけど、僕はアメリカのシニアツアーに行くがことが今年の最大目標なので、それを目がけて、1戦1戦やるだけにはなります」。海外志向が強い宮本が目指すのはPGAツアー・チャンピオンズを来季の“職場”にすること。 11月12~15日にバックホーン・スプリングス(米フロリダ州)で行われるPGAツアー・チャンピオンズの来季出場権をかけたQT第1次予選に出場する。昨年は最終予選会を35位タイと権利を獲得できる上位5人に入ることができなかった。今年はそういう意味ではリベンジとなる。 それまでは次戦の「福岡シニアオープンゴルフトーナメント」(10月26~27日)、「コスモヘルスカップ シニア」(11月1~2日)と国内で2試合に出場してからの移動となる。「(次戦に)向けて反省点はいっぱいあるので、それを少しでも、課題をクリアにして行きたいなとは思いますね」。あくなき挑戦を続ける52歳。米国シニアツアー参戦に向け、この2戦は足掛かりとなりそうだ。(文・高木彩音)