史上初2階級で世界4団体王座統一のクロフォード、井上尚弥を絶賛「勢いを止めることは誰もできない」…5・6ネリ戦
◆プロボクシング ▽WBA、WBC、IBF、WBO世界スーパーバンタム級(55・3キロ以下)タイトルマッチ12回戦 王者・井上尚弥―ルイス・ネリ(5月6日、東京ドーム) WBA、WBC、IBF、WBO世界スーパーバンタム級統一王者・井上尚弥が、元世界2階級制覇王者ルイス・ネリの挑戦を受ける5月6日の東京ドーム決戦まで、6日であと1か月に迫った。井上と“世界最強”の座を争うウエルター級の3団体統一王者テレンス・クロフォード(36)=米国=が5日までに、米ネブラスカ州オマハのジムで取材に応じ、「井上の勢いは誰にも止められない」と言い切った。(取材・構成=宮田 有理子通信員、谷口 隆俊) 王者は、王者を知っている。クロフォードは以前から井上に注目していたことを明かした。最も権威のある専門誌「THE RING(リングマガジン)」が認定するパウンド・フォー・パウンド(PFP、階級を超えた最強ランキング)に関し、「井上と、どちらがトップか」という議論の対象に自身がなっていることを認めた。 「試合を見たのはけっこう、早い段階…。彼が(2019年11月に米興行大手の)トップランクの選手になってから。(21年冬まで)同じプロモーションということで見ていた」 WBO世界ウエルター級王者だった昨年7月、3団体統一王者スペンス(米国)に9回TKO勝ち。史上初めて2階級での4団体王座統一を果たした。同12月に同じ偉業を成し遂げることになる井上が、フルトン(米国)に8回TKO勝ちしてWBC、WBO世界スーパーバンタム級統一王座を奪取し、2階級での4団体統一に向けて好スタートを切った4日後のことだった。PFPで1位を獲得したのはクロフォード。井上は2位だった。 だが、クロフォードがスーパーライト級で統一王者になってからウエルター級統一を果たすまで5年11か月を要したのに対し、井上はバンタム級統一から2階級での王座統一まで、たった1年で達成。“モンスター”の強さを誰よりも分かっている。 「井上は優れた(ボクシングの)才能の持ち主だ。頭脳も優れている。彼の年齢で、この位置にいるのは素晴らしいと思う。今の彼の勢いを止めることは誰もできないね」 印象に残る井上の試合がある。19年11月のドネア(フィリピン)戦だ。世界5階級制覇王者の左で右まぶたをカットし、右眼窩(か)底骨折などのアクシデントを乗り越え、判定勝ちした激闘だった。 「彼のパワーにはいつも目を引き寄せられる。ドネアとの初戦では、彼のハートを見せてもらった。技術もパワーもある。しかし、それ以上のものが必要になったときにどう動くかという場面で、彼のガッツ、覚悟を見せてもらった。それを見たときに、彼にはすべてがそろっていると感じたよ」 クロフォードは、井上がスーパーバンタム級最強で、現役最強の一人とも認める。ただ、自身はPFP首位に立つ誇りがある。 「私は誰かから『あなたが最強です』と言われる必要はないんだ。私は、私が世界最強であると信じることができるから。それだけのことを成し遂げてきたと自負しているから」 先駆者から認められ、賛辞を贈られた井上。来月6日、世界中の視線がネリ戦の東京ドームに集まる。 ◆こんな人 クロフォードは故郷の米ネブラスカ州オマハに興したB&Bスポーツ・アカデミーを拠点に練習している。 7歳からボクシングを始め、「真剣に取り組んだのは13、14歳の頃」だが、それ以降も「悪い仲間」との付き合いがあったという。宮田通信員が、プロ転向後にトラブルで自身の頭を銃弾がかすめたことがあったことについて質問すると「かすめたんじゃなくて、弾は当たったんだ。奇跡的に助かったのは神が与えてくれた幸運。自分という人間が変わった瞬間だった。正しい道へ進むための転機で、PFP1位は心を入れ替えてボクシングに真剣に取り組んだ証しだよ」と言った。 今後、スーパーウエルター級に上げて4階級制覇を目指す選択肢もあり、WBOはWBC、WBO王者ファンドラ(米国)との対戦を指示。クロフォードは「戦うつもりでいる」と視線を上げた。 ◆テレンス・クロフォード 1987年9月28日、米ネブラスカ州オマハ生まれ。36歳。7歳からボクシングを始め、2008年3月にプロデビュー。14年3月にWBO世界ライト級王座を獲得。15年4月にWBO世界スーパーライト級王者となり、17年8月には4団体王座統一を決めた。18年6月にWBO世界ウエルター級王座を獲得。23年7月に史上初めて2階級での4団体統一王者となった。その後、IBF王座は剥奪(はくだつ)。身長173センチの左右ボクサーファイター。ニックネームは「Bud(長男)」。戦績は40戦全勝(31KO)。
報知新聞社