じつは「日本の15歳」は世界でもトップクラスに「数学ができる」のに、なぜか「数学に自信がない」…最新のPISAの結果から見えてきた意外な実態
OECD加盟国および参加を希望した国・地域の15歳を対象に3年に1度行われる、学力到達度調査PISAの最新2022年度の結果を分析した、国立教育政策研究所編『生きるための知識と技能 OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2022年調査国際結果報告書』(明石書店、2024年)が刊行された。 【マンガ】カナダ人が「日本のトンカツ」を食べて唖然…震えるほど感動して発した一言 PISAは日本の順位やスコアが低かったり下がったりした時にだけメディアで大騒ぎされるが、2022年度は数学的リテラシー、読解リテラシー、科学的リテラシーのいずれも国際的に見てトップクラスの好成績を収めたためにあまり注目されなかった。しかし同書の分析を見ると、OECD平均と比較した場合の、日本の15歳の非常に興味深い特徴が見えてくる。
数学の順位と国際比較&経年比較と日本の教育のレジリエンスの高さ
PISAの特徴は、今の、そしてこれからの社会において必要な能力を測定することにある。だから2015年からはコンピュータを用いた調査が一部導入され、2018年からは全面的に導入された。今の時代に紙のテキストと手書きで現地に赴いて行うオフィスワークや公共施設での手続きなど少なく(日本は例外的にそれが多い国だが……)、普通はPCかスマホを使ってオンラインで行う作業の方が多いのだから、当然である。 たとえば数学的リテラシーの調査ではExcelのような表計算ソフトを使って計算したり、割合の変化の増減を比較したりする問題が出題されたり、読解リテラシーの調査では複数のデジタル資料を読みこなして回答するような問題が出題されたりしている。 まずPISA2022に参加したOECD加盟37カ国と非加盟44カ国・地域の中での日本の順位を見ておこう。 数学的リテラシーは全参加国・地域中5番目に高い。ただし平均得点には標準誤差が含まれるため、統計的に考えられる日本の順位は参加国全体では3位~6位の間、OECD加盟国中では1位から2位の間である。 2018年調査と2022年を比較するとOECD平均では平均得点が15~16ポイント低くなっている。一方で、日本は9ポイントプラスだ。 2018年から2022年にどうしてOECD平均では大幅に減少したのかといえば、コロナ禍における学習環境の激変である。日本はコロナ禍での「数学の成績」「教育の公平性」「教育におけるウェルビーイング」、この3つの側面でのレジリエンス(立ち直り)に関してすべてを満たす国・地域に該当する(なぜ「数学」の成績が項目として立っているかというと、PISAは毎回、数学、読解、科学のいずれかを重点的に調査しており、2022は数学の回だったからである)。 同様にコロナでも教育のレジリエンスが3側面すべてを満たした国・地域は、ほかには韓国、リトアニア、台湾のみである。日本国内では2020年には突然に一斉休校となり、リモート授業、オンライン学習の不備に関してさんざん叩かれたが、国際的に見ると例外的に良かった部類に入っている。 北米ではコロナ禍明けでも学校に戻れない子どもが多いことも報告されている(もっとも、コロナと関係なく日本では不登校の児童・生徒の数は増え続けているが、不登校の15歳はPISAを受験していないことは差し引いてスコアや順位を捉える必要がある)。