池松壮亮、ギター1本で上京した過去を仲野太賀に暴露され苦笑い「いまだに弾けなくて…」<本心>
映画「本心」(公開中)の公開御礼舞台あいさつが11月20日に行われ、主演の池松壮亮、三吉彩花、仲野太賀が登壇。撮影でのエピソードなどについてトークを展開した。 【写真】仲野太賀の暴露に苦笑いを見せる池松壮亮 ■鬼才・石井裕也監督によるヒューマンミステリー 日本映画界の鬼才・石井裕也監督の最新作「本心」。原作は「ある男」で知られる平野啓一郎の傑作長編小説で、キャストには主演の石川朔也役の池松、三好彩花役の三吉、イフィー役の仲野に加え、水上恒司、田中泯、綾野剛、妻夫木聡、田中裕子らが集結した。 物語は今からさらにデジタル化が進み、“リアル”と“バーチャル”の境界が曖昧になった少し先の将来、2025年から始まる。亡くなった母の“本心”を知るため、AIで彼女を蘇らせることを選択する青年・石川朔也と、彼を取り巻く人間の“心”と“本質”に迫るヒューマンミステリー。 幸せそうに見えた母が、なぜ自ら死を望んだのか、朔也は、母の本心を探るために不安を抱えながらも、AIにデータを集約させ人格を形成するVF(バーチャル・フィギュア)を利用し、仮想空間に母を蘇らせる選択をする。 ■仲野太賀のキャスティングについての裏話も 舞台あいさつに登壇した池松、三吉、仲野の3人。池松と仲野が公の場で顔を合わせるのは、大河ドラマ「豊臣兄弟!」(2026年、NHK総合)の記者会見以来で、仲野と三吉は2023年夏の撮影以来となる。 仲野が本作の撮影に参加したのは2日間。その濃密な2日間の現場の様子について、池松は「バッチバチでしたね(笑)。豊臣兄弟で三吉さんを取り合うみたいな…」とユーモラスに切り出し、三吉も「私のためにケンカしないで(笑)」と乗っかり、冒頭から会場は笑いに包まれる。 気を取り直して、仲野は撮影の2日間について「基本的に穏やかな感じで、2人がどういう感じで現場を過ごしているのか分からなかったので、とにかく邪魔しないように、良い子に、目立たないように粛々とやっていました」と振り返る。 池松は以前から公私に渡って付き合いの深い仲野の参戦がうれしかったようで、「石井(裕也)組だし、太賀が来ると和むし、あの日が一番楽しかったです。気の抜けない撮影で、いろんな方と対峙する役でしたが、太賀のときだけ緊張もゆるんだし、その後飲みに行って、そこで唯一、この撮影でホッとできました」と告白。 石井組初参加の三吉も「はたから見ていても(現場が明るくなるのを)感じました。監督も池松さんも、仲野さんが来たことで『ウェーイ』みたいな(笑)、男同士の安心感を感じました」と述懐。2人の温かい称賛の言葉に、仲野は「今日、来て良かった」と満面の笑みを浮かべる。 ■石井裕也監督の中で『困ったときの太賀』というのがあった 仲野は撮影本番、アバターデザイナーのイフィー役としてすさまじいまでの存在感を発揮したようで、三吉は「イフィーってミステリアスで不気味でもある役。『ごはんを食べよう』という“あのシーン”でのテーブルからの反射が怖すぎて…(苦笑)。一生不気味だなこの人、みたいな感じでした」と本心から怖さを感じたと明かす。 池松はこのシーンの仲野について「2~3分、フリーで(カメラを)回してたけど、ずっと肉にレモンをかけていました」と本編の印象的なシーンの裏話を証言。 さらに、池松は仲野のキャスティングについて裏話を紹介。「イフィー役をどうするかという話になって、石井さんの中で『困ったときの太賀』というのがあって、途中で役も変わったんです(笑)」と話す。 その仲野は「はっきりと(役が決まった状態で)キャスティングされている感じじゃなくて、(石井監督が)いろんなパターンを考えていらして、スケジュールも正式に抑えられないまま、台本も渡されないまま、『どうやら出るらしい』という噂を壮亮くんから聞くという、あまりないキャスティングの経緯で『本当に参加するの?どうなの?』というのもありつつ(笑)、ギリギリで決まりました」と、出演の流れについてコメント。 そして、「イフィーをやることも直前で決まった感じがあったので、正直かなり不安はありました。なかなかつかみどころのない役だし、朔也とのバランスも、全く違う人間だけど、通じるものが根底にある役で、なかなか僕としても挑戦でした」と振り返る。 ■仲野太賀のネタ投下に、池松壮亮「あんまりウケてないよ」 そんな仲野は、完成した映画のお気に入りのシーンを聞かれ「山田孝之さんと千原せいじさんが…」と公開中の自身の出演作『十一人の賊軍』のネタを突如投下するも、池松から「あんまりウケてないよ。真面目に答えて」と冷たく流される。しかも、このネタは池松が仲野に薦めたという、仲良しエピソードも明らかに。 仲野は、あらためて「序盤で、妻夫木聡さんや綾野剛さんが出てくる、朔也がVF(バーチャル・フィギュア)というものを初めて知っていく流れの中で、田中裕子さんが演じる朔也のお母さまも出てきて、最後に壮亮くんが複雑な表情、感情があふれる、あの一連の流れが好きでした。錚々(そうそう)たる俳優さんが畳みかけるように、見たことのないお芝居をしていて、最後の壮亮くんの全てを受け入れ切れない表情が強烈に残っています」と語る。 このシーンについて、池松は「最終日に1日で撮ったのですが、妻夫木さん、綾野さん、田中さん、1日でこの3人とお芝居をできるって、幸せですよね。本当にラッキーだと思いながら、皆さんのお芝居を特等席で見られたのは朔也という役の特権だったと思います」と充実の表情を見せる。 池松を以前から知る仲野は、「本作だからこそ見ることができた“新しい池松さんは?”」という問いに「この『本心』を作るにあたって、クランクイン前から壮亮くんからも石井さんからも、経緯や作品に懸ける思いを、ずっとそばで聞いていたので、壮亮くんの映画に懸ける覚悟、気迫みたいなものが、普段とはひと回りもふた回りも違うものあるんじゃないか? だからこそ、普段はバラエティに出ないような池松さんを、たくさん見られたと思う。宣伝活動もたくさんやられていて、覚悟を感じました」と回答。 池松は、「自分ではわからないですけど」と照れくさそうな表情を浮かべつつ、「ふと思い出したんですけど、石井さんにこの企画のことを話したすぐ後に、太賀にも話していて、太賀も(原作小説を)すぐ読んでくれたよね?」と、かなり初期の段階で盟友の仲野にも企画について話をしていたことを明かし、あらためて絆の強さを感じさせた。 ■座長・池松壮亮の“本当の姿”を明かしていく 映画のストーリーにちなみ、本作の企画者の1人でもあり、座長でもある池松の“本当の姿”について、三吉は「こんなにも丁寧な座長はいるのか?というくらい、すごいんです。現場でもいろんな方に目が行き届いていて、配慮をされていて。1回も『性格悪そうだな』みたいなところが見受けられなくて、ちょっと悔しいというか、ネタを何も引っ張り出せなかったです(笑)」と少し残念そうに池松の振る舞いを称賛。 一方、仲野からは「壮亮くんは、俳優一筋で、誰しも認める素晴らしい俳優さんだと思うけど、たしか上京してきたとき、ギター1本持ってきて上京したんですよね? なぜかギターだけ持って上京するという。尾崎豊みたいな」と、知られざる池松の上京エピソードが飛び出す。 池松はその理由を「1人暮らしってやっぱりギターかなと思って(笑)」と説明したが、仲野は「こんな“俳優一筋”を絵に描いたような人が、ギター1本だけ持って上京ってエピソードが面白い!(笑)」と語り、池松は「いまだに弾けなくて」と苦笑交じりに告白。 すかさず三吉からも「何で持ってきたの?」と鋭いツッコミが飛び、池松は「触るのは太賀くらいです。上手なんですよ。僕は弾けない」と申し訳なさそうに語り、三吉は「どういうこと?(笑)不思議な2人」と笑みを浮かべる。 その後は、観客からの質問に3人が回答。ここでも仲野が、客席で“太賀”と書かれたプレートを掲げるファンの女性について「姉です」と語った直後に「うそです」と明かし、三吉が「本当にヤバすぎ!(苦笑)」とあきれ顔でツッコミを入れるなど、最後まで和気あいあいとした雰囲気でトークは進み、会場は温かい空気に包まれる。 最後に、池松は「自分たちの幸福や、大切な方の幸福、これからの時代の幸福について考えるきっかけになったらいいなと思っています」と語り、さらに思い出したように「『十一人の賊軍』もよかったら、ぜひ見てください!」と付け加え、舞台あいさつは幕を閉じた。 ■映画「本心」ストーリー 工場で働く青年・朔也(池松壮亮)は、同居する母(田中裕子)から仕事中に電話が入り「帰ったら大切な話をしたい」と告げられる。帰宅を急ぐ朔也は、途中に豪雨で氾濫する川べりに母が立っているのを目撃。助けようと飛び込むも重傷を負い、1年もの間昏睡状態に陥ってしまう――。 目が覚めたとき母は亡くなっていて、生前“自由死”を選択していたと聞かされる。また、ロボット化の波で勤務先は閉鎖。朔也は、唯一の家族を失くし、激変した世界に戸惑いながらも幼なじみの岸谷(水上恒司)の紹介で「リアル・アバター」の仕事を始める。 カメラが搭載されたゴーグルを装着し、リアル(現実)のアバター(分身)として依頼主の代わりに行動する業務を通して、人々が胸の内に秘めた願いや時には理不尽な悪意に晒され、人の心の奥深さと分からなさを日々体感してゆく。 そんな中、仮想空間上に任意の“人間”を作る「VF(バーチャル・フィギュア)」という技術を知る朔也。いつまでも整理のつかない「母は何を伝えたかったのか? どうして死を望んでいたのか?」を解消したい気持ちから、なけなしの貯金を費やして開発者の野崎(妻夫木聡)に「母を作ってほしい」と依頼する。 野崎の「本物以上のお母様を作れます」という言葉に一抹の不安を覚えた朔也は「自分が知らない母の一面があったのではないか?」と、手掛かりを求めて、母の親友だったという三好(三吉彩花)に接触。彼女が台風被害で避難所生活中だと知り、「ウチに来ませんか」と手を差し伸べる。 かくして、朔也と三好、VFの母という奇妙な共同生活がスタートする。その過程で、母の本心、そして「人に触れられない」苦悩を抱える三好を縛る過去、彼女だけが知る母の秘密を朔也は知っていく。その先に浮かび上がるのは、時代が進んでも完全には理解できない人の心の本質そのものだった。