ガリアーノ描く、謎めいた夜の世界「メゾン マルジェラ」24年アーティザナル
クリスチャン ルブタンとのコラボ
足元を飾ったのは、クリスチャン ルブタン(Christian Louboutin)と共同で制作されたレッドソールのタビシューズ。多様な素材を取り入れ、パンプスやニーハイブーツ、ダービーシューズなど7型が登場した。また、古びたストッキングの間に忍び込ませたパールのネックレスや腕時計といったディテールにもストーリー性を感じさせる。
シュールレアリストとしてのガリアーノ
ラストを締め括ったのはイギリスの女優、グェンドリン・クリスティー(Gwendoline Christie)。「ゲーム・オブ・スローンズ」のブライエニー役で知られる彼女が、ミルキーホワイトのラテックスドレスとストライプのコルセットを着用し、人形のようなコケティッシュなキャラクターを演じた。艶めくドール肌のメイクアップは世界的アーティストのパット・マグラス(Dame Pat McGtath)によるもので、この非現実的な美しさも一夜にしてSNS上で大きな話題となった。 パットは後日のインスタライブで、エアブラシマシンとフェイスマスク調合液を使って陶器のような肌を作り出したと明かした。モデルの顔に吹きかけ、ドライヤーでコーティングした皮膜は、薄いマスクのように引っ張って剥がすことができる。細いアーチ型の眉や輪郭をぼやかしたリップなども、シュールなクチュールルックを完成させる重要な要素となった。 30分にわたり繰り広げられた今回のスペクタクルは、90年代~2000年初頭のランウェイを彷彿とさせるガリアーノらしい試み。優れたクチュリエであり、ストーリーテラーである彼にしか表現できないビジュアルポエトリーとなっていた。一過性のブームやトレンドでは終わらせない独特の世界観は、メゾンをまた別のレベルへと引き上げたと言えるだろう。心を揺さぶられた観客からは拍手が鳴り止まず、「ブラボー」の声が何度も上がる。だが、どれだけ求められても舞台に姿を表さなかったガリアーノ。そこはメゾンのハウスコードを守り、観客の脳裏にファンタジーを焼き付けたまま幕を閉じた。