<第94回選抜高校野球>センバツ21世紀枠 候補校紹介/9止 大分舞鶴(九州・大分) 体力強化「粘り」身上に
県内屈指の進学校である大分舞鶴は宿題の多さも有名で、選手の一日はめまぐるしい。三塁手の田中洸太郎(2年)は宿題を終える頃には日が変わる。だが、それだけでは勉強量が足りず、朝5時半から予習して学校に向かう。「大変だけど、充実している」。同様の日々を送った2020年度卒業の野球部の先輩は、22人のうち13人が国公立大、2人が早大に進んだ。 文武両道を地で行くが、甲子園は未経験。だが、21年は近づいた。春の大分大会で30年ぶりに優勝し、夏も準優勝。代が替わった秋も準優勝で春秋連続で九州大会に出場した。 転機は20年8月の河室聖司監督(57)の就任だった。歴代監督にOBが多い中、大分上野丘高出身の指導者が伝統にメスを入れた。大分舞鶴では強豪校に対抗するため、1日約2時間の平日の練習時間を技術の向上に集中してきた。ただ、河室監督は他校の指導者時代に「終盤に疲れで(プレーの精度が)落ちて勝ちきれない」と見ていた。大分舞鶴の指導者になると、思い切って体力作りに時間を割いた。 トレーナーを週1回呼び、主に冬にやっていた体力トレーニングを年間通じて行うようにした。大分県栄養士会の指導で選手個々の食事メニューも見直し、体重がチーム平均で5キロ以上増えた。 その効果はてきめんで、試合後半のここぞの場面で適時打が出るようになった。21年秋の九州大会1回戦では準優勝した大島(鹿児島)に再試合で敗れたものの、最初の試合は九回に追いついて引き分けに持ち込んだ。入学時から体重が10キロ増えた3番打者の都甲陽希(はるき、2年)は「打球の飛距離と速度が上がった」。要所での勝負弱さが消え、逆に「粘り」が代名詞となった。 技術練習も効率化を進め、3班に分かれて分単位でメニューをこなす。三塁側のファウルゾーンで高い防球ネットに向けてフリー打撃並みに強振する練習と、グラウンドでの実戦形式の練習を並行して行うなど工夫を凝らす。躍進の裏には文武両道を貫きながら、グラウンドで進化した姿があった。頭脳も野球の技術も肉体も鍛え上げ、夢舞台への初切符が届くのを待つ。【吉見裕都】=おわり ……………………………………………………………………………………………………… ◇大分舞鶴 1951年創立。大分市内にあり、2020年度卒業生は7割強の225人が東大などの国公立大に合格した。1951年創部の野球部は20年以上、土日などに地域の清掃活動を続けている。