「源氏物語」愛読し注釈 宣長さんの書籍、草稿など85点 三重・松阪
記念館で秋の企画展 国重文48点を含む
三重県松阪市殿町の本居宣長記念館は現在、本居宣長（1730～1801年）が、自身の愛読書「源氏物語」に独自の注釈を加えた書物を紹介する秋の企画展「もののあはれを知る～宣長とひもとく『源氏物語』」を開いている。12月8日まで。 宣長は医業に携わりながら、日本最古の歴史書「古事記」の研究をし、35年かけて「古事記伝」を執筆した他、愛読書だった「源氏物語」の本質を「もののあはれを知ること」とし、その価値を再発見したことでも知られる。 企画展では、宣長が20代の頃に京都で購入した北村季吟の源氏物語の注釈本「湖月抄（こげつしょう）」に、独自の注釈を書き加えた「源氏物語湖月抄」（国重要文化財）や、宣長が源氏物語の中で重要だと思った文を抜き書きしたメモ「源氏物語抜き書き」（同）、独自の注釈を加えて晩年に本として出版した「源氏物語玉の小櫛（おぐし）」（同）の草稿など、国重要文化財48点を含む78種85点が展示されている。 同館によると、宣長がいつの時点で「源氏物語」に出合ったのかは不明だが、医学修行を終えた28歳の頃に、京都で「湖月抄」25冊セットを購入したという記録が残る。金額も1両以上で、現在に換算すると十数万円になるという。 宣長は、自ら物語の本質を読み解きながら講釈も実施。開講案内の出欠確認「開講の廻章（めぐらしよみ）」（1799年）には、松阪の三井家や長谷川家などの豪商も名を連ね、商人たちも講釈を聞いていたことが分かる。宣長の「源氏物語」の講釈は次第に評判を呼び、71歳の時には、紀州和歌山藩藩主・徳川治宝の求めに応じて和歌山城まで赴き、約2カ月にわたって古典作品などの講釈を行った。「源氏物語」のことを語った際には、家臣から「治宝候が大変おもしろいとおっしゃっていました」というメモ「殿様仰書（おおせがき）」（1800年）も受け取っている。 19日と11月23日午前11時からは同館学芸員による展示説明も行われる。 同館の担当者は「文字資料が多い展示ですが、宣長は源氏物語の細かいところにまで注目し、注釈を加えています。物語に対する愛情の深さを感じてもらい、江戸時代の源氏物語の雰囲気を感じてもらえれば」と話した。 月曜休館、開館は午前9時～午後5時。入館料は大人400円、大学生300円、小学4年～高校生200円。 問い合わせは本居宣長記念館TEL 0598（21）0312 まで
