ももいろクローバーZはなぜアニソンに求められる? “唯一無二”のキャラクター性と抜群の表現力を紐解く
今年で結成16年目を迎え、グループアイドルとしてはベテランの領域に入ったと言える今も、無邪気な挑戦心を忘れることなく活動を続けるももいろクローバーZから、またもフレッシュな新曲が届いた。それが、先日10月1日に放送がスタートしたTVアニメ『甘神さんちの縁結び』(テレビ東京系)のオープニングテーマ「やわく恋して ~ずっと僕らでいられますように~」だ。 【画像】百田夏菜子ソロライブに早見あかりがサプライズ出演 13年ぶりの“デコまゆ”披露に「泣いちゃった」 ももいろクローバーZのレーベルメイトで、コラボ曲「パーティーは今」などで縁のあるロックバンド・特撮が楽曲提供(作詞は大槻ケンヂ、作曲はNARASAKIが担当)し、同アニメのために書き下ろされたこの楽曲。主人公の男子高校生・上終瓜生と、彼が居候する甘神神社の巫女三姉妹との同居生活を描いたラブコメ作品のテーマ曲ということもあり、ストリングスやブラスの麗しいサウンドを導入したスウィートなポップソングに仕上がっており、これまで野心的なサウンドの楽曲を歌うことの多かったももいろクローバーZにおいては、逆に新鮮な挑戦になっている。NARASAKIは「やわく恋して ~ずっと僕らでいられますように~」について、「60年台のA&Mレコードにあるような甘い雰囲気を今のももクロでやったら良い塩梅になるのではと思い制作を始めました」(※1)とのコメントを寄せている。 グループは、今年8月にCDシングルとしてリリースされた前作表題曲「レナセールセレナーデ」でもアニメタイアップを担当。人気シリーズ『転生したらスライムだった件』第3期(日本テレビ系)のオープニング主題歌第2弾にあたる本楽曲では、Mrs. GREEN APPLEの大森元貴が楽曲プロデュースと作詞曲を手掛け、彼らしいアイリッシュテイストを取り入れた爽快なロックサウンドによって、中世ヨーロッパ的なファンタジー世界が舞台の『転スラ』の世界観に寄り添うと同時に、ももいろクローバーZとして新しい扉を開く作品になった。 2クール連続で話題のアニメ作品のテーマ曲を担当するももいろクローバーZだが、彼女たちはもとよりアニメとの関わりが深く、これまでに数多くのアニメタイアップ曲を歌ってきた。そこで本稿では、改めてももいろクローバーZの活動におけるアニメソングの歴史を振り返ることで、なぜ彼女たちがアニメ音楽に求められるのかを紐解いていきたい。 ももいろクローバーZとアニメソングの最初の接点となると、インディーズ時代の2009年に発表されたアニソンカバーCD『Lantis presents「スタ☆コレ」』収録の「最強パレパレード」(ラジオ番組『涼宮ハルヒの憂鬱~SOS団ラジオ支部~』テーマソング)にまで遡るわけだが、アニメタイアップという意味では、TVアニメ『ヨスガノソラ』(TOKYO MXほか)EDテーマとして2010年にリリースされた2ndシングル表題曲「ピンキージョーンズ」が最初になる。NARASAKIが作編曲を手掛けたこの楽曲は、世界各地の民族音楽の要素をミックスした摩訶不思議なポップソングとして当時のアイドル界隈で話題を呼び、彼女たちのある種オルタナティブな音楽的志向の嚆矢ともなったわけだ。 2011年の3rdシングル表題曲「ミライボウル」もTVアニメ『ドラゴンクライシス!』(読売テレビ/TOKYO MXほか)のEDテーマと、アニメタイアップが続いた中、彼女たちは同年4月にデビューメンバーのひとりである早見あかりが脱退したことを受け、グループ名を“ももいろクローバーZ”に改名。その心機一転の最初を飾った同年7月リリースの4thシングル表題曲「Z伝説 ~終わりなき革命~」もまた、アニメ音楽との関わりという意味では触れておかなくてはならない。なぜなら、本楽曲にはアニソン界の“アニキ”こと水木一郎が参加しているからだ。戦隊ヒーローをひとつのモチーフとして作られたこの楽曲で、水木は曲中に何度も登場する“Z”のコールを担当。これはもちろん彼の代表曲のひとつ「マジンガーZ」に由来するもので、ももいろクローバーZの定番ポーズ“Zポーズ”も水木が伝授したことで知られる。その意味でも、彼女たちは“アニキ”のアニソン魂を継承したグループでもあるのだ。 1stアルバム『バトル アンド ロマンス』のリリースやライブパフォーマンスが評判となって大ブレイクする中で、2012年にはTVアニメ『モーレツ宇宙海賊』(MBS/TOKYO MXほか)のOP・EDテーマを合わせて担当。中でも前山田健一が書き下ろしたOPテーマ「猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」」では、100人のコーラス隊が参加した宇宙規模の壮大なシンフォニックロックに挑戦し、マーティ・フリードマンのギター演奏とともに話題となった(ちなみにイングヴェイ・マルムスティーンがギターを弾いた別バージョン「猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」(Emperor Style)」も存在する)。 また、同じ2012年には、女の子の落語家たちが主人公のTVアニメ『じょしらく』(MBS/TBS系)のEDテーマとして、桃黒亭一門名義のシングル曲「ニッポン笑顔百景」を発表。前座噺「寿限無」などの一節を引用しつつ、和楽器と電波ソング的なノリをミクスチャーした、彼女たちらしいハイテンションで楽しいこの楽曲は、リリースから10年近くを経てTikTokで世界的にバズり、大ヒットを記録。国境を越えて多くの人に愛されるアニソンのひとつとなった。 以降は、いわゆる国民的アニメの主題歌も多く担当してきた。『ポケットモンスター ベストウイッシュ』(テレビ東京系)のEDテーマ「みてみて☆こっちっち」(2012年)、映画『ドラゴンボールZ 復活の「F」』主題歌「『Z』の誓い」(2015年)、『映画 クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ ~拉麺大乱~』主題歌「笑一笑 ~シャオイーシャオ!~」(2018年)など、いずれも彼女たちの元気でチアフルなキャラクターが活きる楽曲ばかり。子供たちにも人気のアニメ作品との親和性が高い理由も、きっとそういった部分にあるのだろう。