悩ましい「住宅ローン」問題…固定? 変動? それともミックス?「長期金利上昇」でどう変わる?
当面は、2%が上限か‥‥が、5年、10年と先を見通すと
市川さんは「いままで無理に金利を低く抑えてきたが、物価や賃金が上がれば、長期金利も上がっていくと考えられる」と言う。当面は来年の春闘で、経営側が3月半ばの集中回答日に、どのような賃上げを示すのか。 金融機関が日銀に預ける一部の預金にマイナス0.1%の金利を課すという「マイナス金利」が導入されている。日銀が金融機関に対して、日銀への預金で利息を支払うよりも、貸し出しに向けてほしいと意思表明している。市川さんは、春闘で一定の賃上げが示されれば、日銀がマイナス金利を解除する可能性もあるとみており、長期金利の「1%超えもあり得る」とみている。 一方で、市川さんはこうも話す。 「すぐに長期金利が2%になるような急騰する展開にはならないと思う。短期間に長短の金利が上昇すると混乱する。世界経済や国債の需給にそった金利の決まり方、つまり本来のあるべき姿になっていくが、長く時間がかかるだろう。日銀がゆっくりと金融正常化へ舵をとっていくのだろう」 当面は、金利が急騰する可能性は小さいかもしれない。一方、5年、10年と先を見通すと、物価や賃金の上昇により、日銀が金利を低水準に抑え込んでいる金融政策が正常化していくとみられている。そのときは、経済活動の状況次第で、金利がもっと上がり、海外のように日本も数%程度になっていても不思議でない。 ◆固定金利+変動金利の「ミックスローン」で、「変動」部分を繰り上げ返済できるか… 有田さんのところへ住宅ローンの相談にくるケースは、共働き夫婦が多いという。その場合は、夫婦でそれぞれが借り入れる「ペアローン」という方法もある。たとえば、夫婦の一方が固定金利、もう一方は変動金利で借りるとか、総借入額を夫婦で分散して負担するとか。借り入れるのが1人でも「ミックスローン」を選択して、固定金利と変動金利の部分に分けておき、金利が上昇してきたときに、変動金利の部分を先に繰り上げ返済できるといい。そのときに、繰り上げ返済する部分を、自分に合った条件のローンに借り換えるのも選択肢となる。 「固定金利プラスαくらいの金利水準でみてローンを組んだとして、たとえば10年後に教育費がすごく増えた場合や、50代くらいで給与が下がった場合に、返済ができるのか考えてみるといい。金利が上昇していった場合に、変動金利の部分を繰り上げ返済できるのかなど、考えておくといい」 有田さんはこう話す。夫婦でペアローンを組む場合に、たとえばフルタイムで働いていた妻が出産の産休や子育ての時短勤務、さらには正規職員からパートになることで収入がどうなるのか。勤め先の制度や対応でも違ってくるので、妻の収入がどうなるのか、事前によく調べて、考えておくことが大切という。 ◆「何となく」はNG…まずは、お互いの資産や将来へのプランを把握したい 有田さんのところに相談にくる夫婦の中には、夫婦間で事前によく話し合ってこないケースもあるという。夫婦それぞれの年収がどれぐらいあるのか、お互いに知らない人もいるほか、夫は妻がずっと正規社員で働いてくれると思っていると、妻のほうはいずれパートになりたいと思っていたとか。 有田さんは「夫婦が2人で話し合ってこないことがあります。収入とか貯蓄額とか、肝心なことを話し合っていない人が少なくありません」と言う。 金利が上昇していくときに、変動金利で住宅ローンを組んでいると、繰り上げ返済が難しい余裕のない家計は破綻してしまうことがある。固定金利や変動金利は、人によってメリット、デメリットが違ってくる。金利上昇の局面でどう行動するのか、事前にシミュレーションしておくことが大切になる。 取材・文:浅井秀樹
FRIDAYデジタル