人口が減少する中、なぜ人は災害リスクの高い場所に住むのか
洪水などによる浸水の恐れがある地域の人口や世帯数が全国的に増加傾向にあることが、山梨大学地域防災・マネジメント研究センターの秦康範准教授(地域防災)らの研究で分かった。10月26~28日に東京大学で開かれた日本災害情報学会・日本災害復興学会合同大会で、秦准教授が発表した。 災害を「検証」するとはどういうことか──日本災害情報学会などが東京大でシンポジウム 1995年~2015年の20年間で、浸水想定区域内の人口は全国47都道府県中30都府県で、世帯数については46都道府県でそれぞれ増加。全体の人口は減少しているのに、浸水想定区域内の人口や世帯数が増加しているケースもあるという。 水害リスクが高い地域の宅地化が進んでいることが原因と考えられる。日本が人口減少社会に入っているにも関わらず、わざわざこうした地域に人が移り住んでいると思われる現状について、秦准教授は「すでにリスクの高い地域に住んでいる人たちを啓発する一方で、新たな開発については何らかの規制をかけるなど、災害リスクを踏まえた土地利用を推進する必要がある」と話す。
研究方法は、国勢調査や国土数値情報の浸水想定区域のデータを使い、浸水想定区域内にどのぐらいの人が住んでいるかを算出。1995年~2015年の20年間について、国勢調査が実施される5年ごとの数字の変化を追うというもので、全国の推移と都道府県別の推移をそれぞれ調べ、変化率などを出した。 この結果、20年間で、全国の浸水想定区域内の人口は約150万人増加の約3500万人となり、全人口に占める浸水想定区域内人口の割合も1.2%増加の28.0%になるなど、一貫して増加し続けていることが明らかになった。浸水想定区域内の人口が増えたのは30都府県で、この中には全体の人口が減っているところもあった。 また特に注目すべき結果が、浸水想定区域内の世帯数の増加だ。これについては、同じ20年間に約300万世帯増えて約1500万世帯になっていた。都道府県別で見ても、山形県を除く46都道府県で浸水想定区域内の世帯数が増加しており、これは、全国各地で、浸水リスクの高い区域の宅地化が進んでいることを示していると考えられる。