バルクアップのための食事では何が大切?(基礎知識編)
摂取カロリーの目安
続いて、カロリー摂取量の目安を紹介します。トレーニングをして筋肉を増やそうと考える場合は、一般に推奨される量よりも多くのエネルギーを得る必要がある点に注意しましょう。 >一般推奨量 農林水産省によると、身体活動の程度が普通(座り仕事が中心だが、軽い運動や散歩などをする人)の場合、成人女性ならば1日あたり2000キロカロリーから2400キロカロリー、成人男性ならば2400キロカロリーから3000キロカロリーの摂取が勧められています(1)。身体活動量が少ない方や子ども、高齢者は、この値よりもやや少ない数値となります。 >ボディビルダーの例 前述の通り、バルクアップを考える場合は摂取カロリーを一般の方よりも増やす必要があります。余剰のエネルギーがあることで、筋肉を効率良く合成したり、トレーニングの質を上げたりすることができます。トレーニング歴や体重によって必要なエネルギー量は変わりますので、自分の状態を把握して、良い摂取のバランスを見つけることが大切です。筋肉量が増えるにつれて代謝も高くなっていくので、当然、必要なエネルギー量も増えます。コンテストでの仕上がり体重が80kg程度になる場合は、一般成人男性の1.5倍から2倍程度のエネルギー摂取が必要になると言えるでしょう。
三大栄養素の役割と推奨摂取量
摂取カロリー以外に大切なものとして、たんぱく質・炭水化物・脂質からなる三大栄養素があります。筋肉を増やしてバルクアップしたいと考える際には、これらの栄養素をバランス良く摂取する必要があります。今回の記事では、それぞれの栄養素の特徴を解説します。 たんぱく質 >生命を構成するさまざまな物質の材料となる たんぱく質は身体を作るさまざまな物質の元となります。分かりやすい例で言えば、筋肉もたんぱく質が多数集まってできた組織です。それ以外では、身体の機能を調整する酵素の材料になったり、物質を輸送する際の手助けや免疫の維持をしたりもします。たんぱく質を十分に摂取することは、生命を維持するという観点で非常に重要だと言えます。ボディメイクに関してであれば、筋肉の材料そのものであるたんぱく質の不足は、筋肉の発達という面でマイナスになると言えます。 >一部のアミノ酸は筋肉の合成を促す働きも持つ たんぱく質は、アミノ酸が複数結合してできている物質です。食品から摂取されたたんぱく質は、消化を経てアミノ酸の形で吸収され、再び身体の中で必要な形のたんぱく質へと作り変えられます。アミノ酸の中には、たんぱく質の材料となる以外に、それ自体が機能を持つものがあります。BCAA(分岐鎖アミノ酸)の一つであるロイシンは、筋たんぱく質の合成を促す働きがあることが知られています(2)。 >一般的な推奨摂取量とボディメイクにおける推奨摂取量 たんぱく質は体の組織の材料になると同時に、身体の中の様々な機能に関わる物質です。そのため、ボディメイクを考えていない一般の方も不足しないように注意が必要です。厚生労働省の発表する食事摂取基準では、体重1kgあたり0.66gのたんぱく質の摂取が必要とされています(3)。トレーニングをして筋肉を増やしたいと考えている場合は、さらにこれより多くのたんぱく質を摂取しないといけません。体重1kgあたり2g程度の摂取が一つの目安ですが、中には、体重1kgあたり1.62g以上のたんぱく質を摂取しても、追加の効果はないとする研究もあります(4)。そのため、自分の身体の状態を見ながら、少しずつ適した量を見つけることが大切だと言えます。 炭水化物 >エネルギーを作る元となる 炭水化物は、ヒトが消化できる糖質と消化できない食物繊維からなります。小腸から吸収された糖質(グルコース)は、血液を介して身体の各組織に運ばれ、呼吸によりエネルギーを取り出す反応に使われます。また、使いきれなかった余剰のグルコースはグリコーゲンという物質に作り変えられ、筋肉や肝臓の中に蓄えられます。運動や絶食等により血糖値が下がった場合は、貯められたグリコーゲンを分解することで、血糖値が一定に保たれます。グルコースは、場合によっては体脂肪に変換されることもあります。 >消化吸収の速さが異なる食材がある 炭水化物は、含む糖質と食物繊維の割合等で、消化吸収の速さが変わります。一般にGI(グリセミック・インデックス)値と呼ばれるものが、その吸収の速さに関係する指標です。素早く消化吸収される炭水化物は、それだけ早く血糖値を上げることになります。反対に、GI値が低く、消化吸収に時間がかかるような炭水化物の場合は、血糖値の上昇も穏やかなものとなります。 脂質 >飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸がある 脂質は多く分けると飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸になります。飽和脂肪酸は分子中の炭素に二重結合がなく、そのため融点が高い(常温で固体になりやすい)性質を持ちます。不飽和脂肪酸は分子中に二重結合を多く含むため、融点が低い(常温で液体になりやすい)性質を持ちます。牛脂やラードなどが飽和脂肪酸、植物油や魚油(フィッシュオイル)が不飽和脂肪酸の代表例です。体内で合成することのできない必須脂肪酸は不飽和脂肪酸に含まれます。飽和脂肪酸の摂取過多は、健康面で悪影響をもたらす場合があるので注意が必要です。 >エネルギー貯蔵の観点での脂質の役割 脂肪はエネルギーを効率良く貯蔵することができる物質です。たんぱく質や炭水化物が、1gあたり4キロカロリーの熱量を持つのに対し、脂肪は1gで9キロカロリーもの熱量を持ちます。そのため、身体にエネルギーを貯める場合は脂肪の形を選ぶことが最も効率が良い選択だと言えます。しかしながら、このことが、ボディメイクで理想の身体を作る際に一番厄介なポイントとなります。この問題を乗り越えるために、選手の多くは増量期と減量期の双方でさまざまな工夫をしています。