新卒採用活動でモータースポーツ観戦 ホンダカーズ中央佐賀、専門学校生65人招待 「車に興味を持って」
ホンダカーズ中央佐賀(本社・佐賀市、大橋友文社長)は、新卒の自動車整備士を確保するため、採用活動にモータースポーツ観戦を組み入れ、車に興味を持ってもらう試みを始めている。若者の車離れに人手不足が重なり、自動車整備の現場では人材確保に向け新たな対応を模索している。 5月19日、大分県日田市のオートポリスで開催した全日本スーパーフォーミュラ選手権に、佐賀市と福岡県久留米市内の自動車専門学校生計107人を招待した。このうち佐賀工業専門学校(佐賀市)からは自動車学科の1、2年生65人が参加。同校の2年生27人は、昨年もオートポリスでフォーミュラレースを観戦している。 同社の自動車整備士は2022年の採用が2人で23年は1人、今春の採用はゼロだった。整備士の人数はここ数年ぎりぎりの状態が続いており、人材確保は喫緊の課題。ホンダの関連会社の自動車専用パーツを販売した実績で、レースの招待券を入手できるため、新卒採用を目的に有効活用することを決めた。 佐賀工業専門学校は授業の一環で、学校独自にレースやモーターショーを見学しており、同社からの誘いにも応じた。末次克文教諭は「スマホなどで簡単に画像を入手できるが、レーシングマシンから一般車両への技術的なフィードバックは多岐にわたっており、レース観戦を通じて技術の奥深さを見て、感じてほしい」と狙いを説明した。 1年生はほとんどがレース観戦は初めてで、田中俊士也(としや)さん(18)と篠原康一郎さん(18)は「マシンのスピードと爆音を聞いて心がワクワクしてきた」と話す。加賀美雪音(しゅおん)さん(18)は「1台のマシンを走らせるためにドライバー、メカニックなど多くの人が関わっている。自動車産業にはこんな世界もあることが分かった」と感想を語った。 専門学校の就職活動は人手不足の影響もあり、最近は1年生の学年末と早い段階で内定が出る。ホンダカーズ中央佐賀では既に来春4人の内定を決定、このうち3人が佐賀工業専門学校生で、昨年のフォーミュラレース観戦に参加した生徒という。 同社の古田真二総務管理部長は「車への関心が薄い若者が増えていることを危惧する。こういう機会を増やし、車にもっと興味を持ってもらい新卒採用につなげたい」と話している。(澤登滋) ■全日本スーパーフォーミュラ選手権 国内最高峰の4輪自動車レース。2リットル直列4気筒ターボエンジンはホンダとトヨタが開発し、イタリア製の車体に搭載して速さを競う。最高出力は550馬力で、トップスピードは時速約300キロに達する。日本人初のフルタイムF1ドライバーの中島悟が率いるチームなど今年は12チーム、21台が参戦する。オートポリス(大分)や鈴鹿サーキット(三重)などで、年間9戦開催される。
澤登滋