戦艦武蔵は最強の艦だったのか?技師や乗組員らが語る実像 最終回「武蔵」運命の捷一号作戦
「アメリカの戦艦と正面から向き合い戦ったら武蔵が圧勝していたに違いない」。と評する意見は今でもある。しかし、戦艦対戦艦は「武蔵」が生まれた時代には起こりにくい戦いの形であった。 歴史上の英雄にも当てはまるが、特に志半ばで亡くなった人たちの評価には幻想や願望もついて回る。兵器であった「武蔵」に人々がある種の憧れを抱くのは建造につぎ込んだエネルギー、そして建造時には想定していなかった航空機による攻撃で完成からわずか2年、”志半ば”で沈んでしまったという悲劇があるからかもしれない。 海中に没した「武蔵」は2015年3月シブヤン海の海底で発見された。潜水調査船映像が映し出したのはかつての威容ではなく、想像を超えるまでにバラバラになった「武蔵」の姿だった。長年「武蔵」は原形をとどめたまま沈没していると考えられていたが、その想像を覆すほどの破壊だった。海中に没する段階で弾薬庫内で主砲弾などが爆発し強靭だった「武蔵」の船体をバラバラにしたと見られている。史上最強の破壊力が自らに向けられたといってもいいような最後であった。海中に眠る「武蔵」の残骸。それは威厳や誇りでさえ容赦なく打ち砕く戦争の無常さを伝えているように感じた。(NBC長崎放送 長征爾)
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