『光る君へ』源倫子がまひろを見つめるシーンに視聴者最注目 第44話画面注視データを分析
三条院、失意のまま崩御
3番目に注目されたシーンは20時30分で、注目度77.6%。三条院が失意のまま崩御したシーンだ。 「父上!」第一皇子である敦明親王が懸命に父に声をかける。その隣には皇后・藤原すけ(女偏に成)子(朝倉あき)の姿もある。先帝・三条院は今、まさに死の床にあった。 「闇だ…」と、つぶやく三条院には、もはや光も音も届かない。「ここにおります! 母上も」それでも敦明親王はなんとか父に聞こえるように大声で叫ぶ。「闇でない時は、あったかのう…」三条院もまた、朦朧(もうろう)とする意識の中で、愛する妻と子に何かを伝えようとしている。「すけ子」「はい」三条院の今にも消え入りそうな呼びかけに、すけ子は涙をこらえて応えた。「闇を共に歩んでくれて、うれしかったぞ」「お上…」夫の手のひらをすけ子はぎゅっと握った。「お上はいつまでも、私のお上でございます」三条院はすけ子に看取られ崩御した。時代の流れに翻ろうされ続けた42年間だった。
■苦労人の三条天皇に同情 ここは、一瞬で没落(回にして5回)してしまった三条院の最期に、視聴者の哀れみの視線が集まったと考えられる。 三条天皇は986(寛和2)年に一条天皇が即位すると、藤原兼家の後押しもあり、当時11歳で東宮となった。それから25年もの期間を東宮として過ごし、ようやく即位したが、待っていたのは道長及び病との戦いの日々だった。非常に長期間にわたり、我慢と忍耐を強いられた人生であったといえるだろうか。 SNSには、「三条天皇と道長のガチバトル、今まで見ごたえあったな」「三条天皇も全盛期の道長相手によく戦ったよね」「即位したときは嫌いだったけど、ここ数話ですっかり同情してしまった」「4年ほどしかない短い在位かつ目と耳を病みながらも立派に生き抜かれたと思います」と、苦労人である三条天皇に同情する多数の追悼コメントが集まった。 これまでの視聴データにおいても注目度トップ3に入ることはなかったが、最後の最後で視聴者の視線をつかんだ。絶対的な権力者である道長に必死にあらがう姿が皆を惹きつけたのだろう。愛する妻・すけ子とその子・敦明親王が、耳の聞こえない三条院に懸命に声をかける姿も涙を誘った。あの場に中宮である妍子とかわいがっていた禎子内親王がいなかったのは状況的にあり得ないが、これも妍子の道長への当てつけという設定だとしたら恐るべし妍子だ。 三条院の崩御に伴い、敦明親王は東宮の座を自ら降りたが、賢明な判断だったかもしれない。政治的に道長の邪魔となる者は、藤原道隆(井浦新)・伊周(三浦翔平)親子や一条天皇(塩野瑛久)をはじめ、そのほとんどが道長にとって絶妙なタイミングで亡くなっている。結果、敦明親王は58歳まで生きのびている。