八戸・毘沙門のイチョウ生育良好 治療に区切り、経過観察へ
古木の命が未来へつながる見通しとなった。八戸市は29日、衰弱していた同市田向3丁目の「毘沙門(びしゃもん)のイチョウ」の公開樹木診断を現地で開き、北東側の2割ほどで樹勢が回復し、良好な生育状況であることを明らかにした。土壌殺菌などの治療は本年度で一区切りとし、今後は経過観察に移る。樹木医の釜渕一壽さん(62)=青森県樹木医会=は「回復している部分が生育して命をつなぎ、元の樹形になるまで成長することは可能だ」と期待を込めた。 イチョウは推定樹齢550年を超え、市の保存樹木に指定されている。田向地区の区画整理事業に伴い2005年、元の場所から約130メートル離れた現在地に移植。当初は順調だったが、3年ほどたつと樹勢が衰退し始め、16年にナラタケ病の感染が判明した。八戸造園建設業協会と県樹木医会が治療を施し、田向土地区画整理組合から市に管理が移った18年度以降も、両者に治療を委託してきた。 本年度は7月に土壌改良と殺菌を実施。これまで診断してきた斎藤嘉次雄さんの退任を受け、役目を引き継いだ釜渕さん。「根元のナラタケ菌が昨年より減少した。樹勢は回復傾向で、葉の色やギンナンの結実状況も治療を開始してから最も良好だ」と説明した。 一方、病気で枯死した幹や大枝の再生は不可能で、病気の拡大や事故防止の観点から、将来的には切除が必要との見解を示した。その上で「元の樹形になるまでには相応の時間と手入れが必要。人間の都合で移植されたのだから、最後まで面倒を見ることが携わった者の務め」と、長い目で見守る重要性を訴えた。 市公園緑地課によると、治療の休止は昨年度の市緑の審議会で了承された。今後は他の保存樹木と同様に見回りや施肥などの手入れを続け、問題が生じた場合は市と同協会で対応を協議する。
デーリー東北新聞社