米国に「対中外交の圧倒的な差」を見せつけられる日本のお寒い現状
米中関係は表向き緊張していても、裏側では密な接触が続けられている。対照的に日本は中国と、そうした「大人の外交」ができていない。石破政権の誕生で、その差は埋まるのか。元朝日新聞政治部長の薬師寺克行氏が解説する。 【画像】中国との「裏の外交ルート」を担当する米国のジェイク・サリバン大統領補佐官 独自の国家観や世界観を振りかざし、協調的な姿勢を見せない中国とどう付き合うか──。中国との外交は、西側の主要国にとって最重要課題のひとつとなっている。 なかでも日米両国は、対中関係で深刻な懸案を数多く抱えている。だが、中国との向き合い方は正反対だ。
裏で接触し続ける米中外交
米国では議会や国民のあいだで反中ムードが高まり、トランプ政権時代に長年の「エンゲージメント(関与)政策」から、対立や競争を前面に出す強硬策に大きく転換した。 中国からの輸入品に対してトランプ政権が課した高率の追加関税は、バイデン政権でも引き継がれ、新たに先端半導体技術の対中輸出禁止措置も実施された。だからといって、米中関係が途絶しているわけではない。むしろ逆だ。 こぶしを振り上げつつも接触を絶やさず、着実に危機管理をする──そんな米国流のプラグマティックな対中外交の舞台裏を、英紙「フィナンシャル・タイムズ」が詳細に報じている。 同紙によると、2022年8月のナンシー・ペロシ下院議長の訪台で米中関係が緊張したが、わずか3ヵ月後の11月にインドネシアのバリ島でジョー・バイデン大統領と習近平国家主席が会談し、「裏の外交ルート」確立で合意した。 2023年2月には、中国の偵察気球を米国が大西洋上で撃墜したため、米中関係がふたたび緊張した。すると「裏の外交ルート」担当のジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)と王毅外相・国務委員が同年5月に、オーストリアのウィーンで2日間にわたって合計8時間も極秘に会談した。 両者は、ウィーンでの極秘会談や、2024年8月に北京であった会談も含めて、4回も会っているというのだ。 米中両国は、「表の外交」もしっかりと継続している。バイデン大統領と習近平主席が毎年、電話を含め何度も会談するほか、閣僚ら要人の往来や会談は絶えることがない。 米国諜報機関CIAのビル・バーンズ長官は2024年9月、英国の諜報機関MI6のリチャード・ムーア長官との対談で、「不必要な誤解を避けるため過去1年間に2回、中国を訪れた」ことを明らかにした。諜報機関トップまでもが、中国と接触しているのだ。 もちろん、首脳会談のたびに合意や成果を生み出しているわけではない。だが、互いに牽制し対立しつつも、無視できない存在として接触し続け、無用な摩擦や衝突を避ける。大人の外交ともいえるだろう。