【事故から19年】「4月25日はやっぱり特別な日」 遺族がJR福知山線脱線事故で遺された“記憶”を繋ぐ一方、JR職員への研修には課題
(遺族の1人・原口佳代さん) 「やっぱり主人が最後に死んだ場所だから、とりあえず行きたいという思いがあったので。一体電車がどういう風になってどういう風に亡くなったのか見たかったので行きました。もう団子状態のグチャグチャでしたけど」 散乱した車内。つり革。折れ曲がった座席。残された車両は事故の衝撃を物語ります。 (遺族の1人・原口佳代さん) 「あの事故のすごさ。悲惨さをまず感じてほしいのと、1つのミスでこんなに電車がグチャグチャになるっていうのと、やっぱり映像で見るのと、生で目視するのとは違うと思うので」
大阪府吹田市にあるJR西日本の社員研修センター。事故車両を保存する施設の工事が進められています。 ただし、1両目から4両目は救助の際に細かく裁断されていて、復元が難しいとして部品の状態で展示。5両目から7両目は、連結した形で現状のまま保存される計画です。 原口さんら遺族らが目にしたものが、そのまま展示されるわけではありません。完成予定は来年12月です。 そして、事故車両を一般に公開するかどうかは、まだ決まっていません。遺族の中にもさまざまな意見があるからです。
JR福知山線脱線事故から19年。JR西日本は今も事故車両を社員にもほとんど公開していません。ABCテレビはJR西日本に「事故の教訓を継承する取り組みをどのように実施しているのか」と尋ねました。 これに対しJR西日本は「これまでに鉄道安全考動館を開館したほか、事故現場を事故や救出活動の痕跡が残る部分を中心に保存し、“祈りの杜”として整備しました。これら2つの大切な場所で研修を全ての社員に実施しております」と回答しました。 しかし、JR西日本の現役運転士は「“鉄道安全考動館”や“祈りの杜”での研修は順番がなかなかまわってこない」とした上で、通常の研修は、コロナの影響もあり、オンラインで行われていると明らかにしました。 (現役JR西日本社員A) 「いまは本当にYouTubeを見ているようなもので、なかなか頭に残りにくいというか」 「オンライン研修なので待ち時間がなく、いつでも受けられるとか何回でも繰り返し見られるっていうのはあるけど、動画を見て聞いているだけなんで緊張感も何もない」 (現役JR西日本社員B) 「タブレットでも事故のことはやっているが、こちらから質問する時間がない」 かつては、対面で学んでいたという基礎的な知識をいまは動画で学びます。事故車両を研修に活用するのは来年12月以降。事故発生から20年後です。
事故で夫を亡くした原口佳代さん。 遺された“記憶”を繋ぐ車両には、強い思いがあります (遺族の1人・原口佳代さん) 「私たちが亡くなってしまったら、施設の完成を見届けたくても見届けられないからちょっと20年は長かったんじゃないかなって。(車両は)最後に亡くなった場所なので“そこに魂がある”と思ってるから、半分お墓みたいなものだし、大切にしてほしいという思いはありますね。」