トヨタ会長「EVシフトなら原発10基」発言に呼応?ビル・ゲイツが狙う“金脈”とは
● 太陽まかせ風まかせの不安定を 火力発電所が支えている皮肉 温暖化ガスを排出しない電源といえば、太陽光発電や風力発電をはじめとする再生可能エネルギーの導入が、日本を含め、世界で急ピッチに進んでいる。 むしろ、核エネルギーよりも再生可能エネルギーの方が、規模の面では脱炭素電源として主流になりそうな勢いだ。国際エネルギー機関(IEA)によると、2022年における全世界の発電量のうち、再生可能エネルギー由来は30%を占め、最も控えめの予測でも、2030年までに50%近くまで上昇する見込みだ。 再生可能エネルギーだけで大量の電力を、長期間にわたって安定かつ安価に供給できるのであれば、理想かもしれない。だが実際はそううまくいきそうにないのが現状だ。再生可能エネルギーを増やすだけでは、増大する電力需要を賄うのと並行して、2050年までにカーボンニュートラルを達成するのは難しい。 再生可能エネルギーとして代表的な太陽光発電や風力発電には、現時点で2つの課題がある。 1つめは、天候に左右されやすいこと。 もう1つは、火力発電や原子力発電と比べて、広い設置面積を必要とする点だ(図1-10)。 当たり前のような話だが、太陽光発電が発電できるのは晴天の時だけで、風力発電は風が吹いた時だけだ。再生可能エネルギーだけに頼ると、電力が必要な時に発電できず、不要な時に余分な電力を発電するという状況が起きうる。つまり、間欠性が課題とされているのだ。 再生可能エネルギーの間欠性を現在補っているのは柔軟に出力を調整しやすい火力発電である。再生可能エネルギーを大量に導入したからといって、単純に全ての火力発電を廃止できる状況にないのはこのためだ。
出力の柔軟な調整は不得意ではあるものの、稼働時に温暖化ガスを排出しないベースロード電源の選択肢は今のところ原子力発電しか見当たらない。 ● 広大な土地を使う割には 再エネの発電量は小さい 太陽光発電や風力発電のもう1つの課題が、広い設置面積を必要とする割に、発電出力が小さいことだ。実際の発電所で比較してみよう。 2018年に稼働した日本最大級の太陽光発電所「瀬戸内 Kirei太陽光発電所」。約260ヘクタール(東京ドーム56個分)の敷地で、最大電気出力235メガワットを生み出す。一般家庭約8万世帯分に相当する規模だ。 風力発電も、広い設置面積が必要なのは同じだ。2020年に稼働した「ウィンドファームつがる」(青森県つがる市)は、陸上風力発電所として国内最大規模を誇る。長さ約50メートルのブレード(羽根)を備えた風力発電機38基を設置して、総出力121.6メガワットの電力を生み出す。同発電所の敷地は広大で、その風力発電機は、青森県の日本海側の海岸、およそ南北10キロメートルの範囲に点在している。 こうした大規模な太陽光発電や風力発電は、導入コストの低減やFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度)に支えられ、全国で普及が進んできた。ところが、先に例として挙げた太陽光発電所と風力発電所の電気出力は、どちらも、火力発電所や原子力発電所1基あたりの電気出力に満たない。 例えば、2020年に運転を開始した電源開発の竹原火力発電所(広島県竹原市)の新1号機は、単体で600メガワットの最大出力がある。敷地内の他の発電機と合わせた最大出力は合計1.3ギガワットに上る。 一方、郊外緑地を含む同発電所の敷地面積は約40.8ヘクタール(約40万8000平方メートル)に過ぎない。前出の太陽光発電所が、最大の電気出力235メガワットで敷地面積260ヘクタールだったのを思い出してほしい。