「最終面接直前に『バイトがあるから』と辞退を希望した小嶋陽菜」「高校を中退して上京した大分の女の子」「前田敦子を見出した夏まゆみ先生」…元AKB48支配人が振り返る「一期生オーディション」秘話
ビジュアルよりもやる気
まず、書類選考で見ていたのは、ビジュアルよりも、むしろやる気。誤字脱字はもちろん、適当なことをダラダラ書いるような子は容赦なく落としていった。実際に話してみないとわからないことも多いが、本気かどうかはだいたい書類の時点で伝わってくる。粒揃いの原石から選抜するというより、明らかにアイドルに向いていない子を落とす作業に近いかったかもしれない。 次のオーディションと最終面接も基本的な方針は変わらないが、書類選考時よりもビジュアルは重視していた。ただし、可愛ければ即合格というわけでもない。絶対条件ではなかったものの、清楚さはひとつのポイントになっていたように思う。 あと大事なのが、きちんと受け答えができるかどうか。秋元先生が言う通り、求めていたのは「会いにいけるアイドル」。ファンとの交流も想定していたので、コミュニケーションがうまく取れない子は難しい。グループでステージに立つという観点でも、スムーズな意思疎通は不可欠な要素だった。 このとき、最終面接を通過したのは24人。ここからレッスン期間中に脱落した子もいるので、最終的には一期生としてステージに上がったのは20人だ。 そのうち一般応募組は、板野友美、峯岸みなみ、折井あゆみ、増山加弥乃、渡辺志穂、佐藤由加里、宇佐美友紀、星野みちる、大江朝美、駒谷仁美、成田梨紗、平嶋夏海、中西里菜、浦野一美、戸島花の15人。 残りの5人は、オーディションへの声がけやビラ配りがきっかけで一期生となったメンバーだ。小嶋陽菜、高橋みなみ、前田敦子、大島麻衣、川崎希がこれにあたる。 せっかくなので、当時、特に印象に残ったメンバーを紹介していこう。
「アイドルで一番大事なのは運」
まず、応募組の佐藤由加里は、応募書類に同封する全身写真の時点で他の女の子とは一線を画していた。だいたいの女の子は、自分が一番輝いているであろう特別な1枚を送ってくる。しかし、佐藤の全身写真はなぜか年季の入った襖の前で撮られていて、しかも履いている靴下には穴が空いていた。剥き出しの野心を持った子が多かったからこそ、飾らない雰囲気を漂わせる彼女には個人的にとても興味が湧いた。 オーデション合格後のエピソードもなかなかのものだ。静岡から上京した佐藤は、一時期生活に苦労していた。親戚が経営する水道橋のボクシングジムのリング上で寝泊まりしていたのだ。ジム生たちの早朝トレーニングと共に起きる毎日で、レッスンの空き時間にはマクドナルドでバイトもこなしていたという。こういったタフな経験と打たれ強さも彼女の大きな魅力だった。 そんな佐藤と対照的だったのが、渡辺志穂。彼女の実家はかなりのお金持ちで、オーディションに合格するなり、両親が買い与えたタワマンに住み始めたので当時すごく驚いた。内心では「いきなりそんな生活してアイドルとして踏ん張れるのか?」とけっこう心配でもあった。 ただ、一期生メンバーのなかで一番の覚悟を持っていたのは、おそらく中西里菜だったと思う。真面目な大分の家庭で育った彼女は当時、偏差値の高い地元の進学校に通っていた。書類審査は合格したものの、次のステップに進むかどうかでずいぶんと悩んだらしいが、最後は決意して上京した。 「アイドルで一番大事なのは運」という秋元先生の言葉がある。この運を大事につないでいった先に成功がある、というのが先生の考えだった。 中西の長い人生で考えたら高校の卒業資格を持っていないのは大きなリスクだろう。でも彼女は、「この運をつなぎたい」と考え、高校を中退した上で秋葉原48の選考会場にやって来た。 秋元さんもこの気合いにはたいそう心を打たれたらしく、「この子は入れてやらなきゃダメだろう」と言って、見事にオーデションを通過した。 そういえば、秋元さんはスタッフやメンバーに「ドミノ倒し」の話もよくしてくれた。まず身近な人をファンにつけること。そのひとりの感動がドミノ倒しのように広がり、最後には大衆の心を動かすのだ、と。そういう意味で、当時のスタッフたちを感動させた中西は、この言葉を体現していたメンバーのひとりだったと思う。
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