「本を読みにおいでよ!」 田んぼの中に立つロボット図書館/福岡県みやこ町
図書館は地域の中心にあるのが一般的。なぜ人通りが少ない場所を選んだのだろうか? 「図書館が神出鬼没だと面白いじゃないですか」と山崎さん。「えっ、こんなところに!なんて、本との出会いを演出できるのが楽しいんです」と笑顔を見せた。 田んぼの中にロボットを見つけ、絵本を開いて笑顔になる。なんだかユニークで、おおらかで、気持ちがほっこりする、みやこ町――。地域のイメージも発信する図書館は「身の丈にあった小さなまちおこし」でもある。
幼い日の記憶の中に
地域で管理する小さな広場には花が咲き、高屋川のせせらぎが聞こえる。本の貸し出し期限は特になく、「読んだら返す」でOK。たとえ返ってこなくても「町のどこかにあるでしょう。最後はその人の心の中にあればいいのだから」と山崎さんは笑う。 ロボットの”メンテナンス”と草むしりのため、週に1度は訪れるという山崎さん。「飽きられないように」と月2回ほど、ポケットマネーで少しずつ本を入れ替える。
「子どもが本の面白さを知る場所に」と願う山崎さん。青い空の下で祖父母や両親に本を読んでもらった思い出は、古里の風景とともに心に深く刻まれるだろう。 これから山崎さんは、どんな本を選んで図書館に並べていくのだろう。田んぼのあぜ道に黄色いタンポポが咲く季節になったら、この里山をまた訪れたいと思った。
読売新聞