Amazon、シンガポール投資倍増 AIブームで
米アマゾン・ドット・コムのクラウド事業、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は、今後5年間でシンガポールへの投資額を倍増させる。2028年までに120億シンガポールドル(約1兆3700億円)を追加投資すると明らかにした。クラウド事業の拡大を図るほか、デジタルスキルの向上と生産性の向上に力を注ぐという。 ■ 東南アジアの重要性を強調 AWSのシンガポール責任者、プリシラ・チョン氏は、「今回の投資は、すべてアジア太平洋・シンガポール地域に関連するデータセンター機能の構築と強化に充てられる」との方針を説明した。 AWSは、2010年にシンガポールで、アジア太平洋地域のクラウドサービス拠点を開設した。これは同社にとって欧米以外で初のクラウド拠点だった。AWSはそれ以降、同国のクラウドインフラなどに115億シンガポールドル(約1兆3200億円)を投じてきた。 チョン氏は、「2010年の投資を皮切りに、AWSは東南アジア諸国連合(ASEAN)地域への取り組みを強化し、各国のデジタルスキルを高め、地域全体で安全性とレジリエンス(強じん性)のあるインフラを提供してきた」と強調した。 AWSは2017年移行、シンガポールで40万人以上にクラウドスキルのトレーニングを提供してきた。「今後もスキルアップと生産性向上に投資していく」(同)。
シンガポール情報通信省のタン・キアット・ハウ上級国務大臣は声明で「AWSのようなクラウドサービスプロバイダーは、デジタル経済圏の強化において重要な役割を果たす」と述べ、AWSの投資を歓迎した。 ■ マイクロソフトも東南アジアに投資 AI(人工知能)ブームにより、クラウドコンピューティングサービスやデータセンターに対する需要が高まっている。AIモデルの訓練には膨大な量のデータが必要であり、クラウドが大量のデータセットへのアクセスを提供しているからだ。 米調査会社のシナジー・リサーチ・グループによると、AWSは、2024年1~3月期における世界クラウドインフラ市場で31%のシェアを獲得して1位だった。これに米マイクロソフトが次いだ。マイクロソフトも東南アジアを重視している。同社は先ごろ、マレーシアやタイ、インドネシアなどでクラウド・データセンター・AI分野の投資を増やすと明らかにした。 ■ AWSの営業利益、アマゾン全体の7割 AWSは2023年3月、 マレーシアに2037年までに60億米ドル(約9300億円)超を投資し、新しいデータセンターを開設すると発表した。2022年10月には、タイに15年かけて50億米ドル(約7800億円)を投資すると明らかにした。AWSは2021年12月にインドネシアのジャカルタでデータセンターを開設している。 米アマゾンが先ごろ発表した2024年1~3月期のAWS事業売上高は前年同期比17%増の250億3700万ドル(約3兆8900億円)だった。AWSの営業利益は前年同期比84%増の94億2100万ドル(約1兆4600億円)に達した。同事業の営業利益はアマゾン全体の7割を占める。
小久保 重信