課題となる深刻なオーバーツーリズムへの対応
京都のオーバーツーリズム問題
水際対策緩和後に外国人宿泊客が大幅に増えた京都では、宿泊によって滞在日数が増えても、訪日外国人観光客が特定の観光スポットに集中する傾向は変わらない。これが、地域住民の生活に悪影響を及ぼすオーバーツーリズムの問題が深刻になっている。例えば、訪日外国人観光客の増加で、一部地域で市民が市バスに乗れなかったり、ごみの不法投棄が相次いだりする問題が発生している。京都市は場所、季節、時間という三つの「分散化」を掲げ、観光先の分散化を働きかけているが、特定地域への集中を防ぐことはできていない。 オーバーツーリズムの問題によって重要な観光資源の価値が下がるようなことが生じないように、各地域の新たな観光資源を積極的に訪日外国人観光客に発信し、訪問先の分散を図ることが求められる。さらに、SNSの分析やAIを活用して将来の来訪者数を予想することで、混雑緩和策などを事前に講じること、入館料などに、価格をAIの予想を用いて需要に合わせて随時変動させる、ダイナミックプライシングを導入して、価格で需要を平準化させるなどの取り組みも検討されるべきだろう。 (注)黒幕は台風対策で8月15日に取り外された。その情報が拡散し、外国人観光客が戻ってきている模様 (参考資料) 「「富士山に幕」 訪日客3割減 河口湖のコンビニ周辺 本社などデータ分析」、2024年7月23日、東京読売新聞 「インサイド オーバーツーリズム 解消遠く 2023年 京の観光消費1.5兆円 滞在日数増も集中変わらず 京都府全域へ 分散化模索」、2024年7月24日、京都新聞 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英