供給が増えないのに、新電力はなぜ電気代を安くできるの?
新電力が保有する発電設備は、ほぼすべて火力発電
電気のコストは、大きく分けると発電と送電・配電の費用です。このうち、4月からの家庭向け送配電の費用は、全ての事業者が同じ金額の負担になるように資源エネルギー庁が査定を行い定めました。例えば、東京電力管内であれば、1kWh当たり8.61円、関電管内では7.86円です。結局、発電コストの違いが事業者の競争力を定めることになります。 では、発電コストはどのように決まるのでしょうか。 新電力が保有している発電設備は発電量の0.02%をまかなう再生可能エネルギーの設備をのぞき、99.98%が火力発電所です。ほかの事業者から購入している電気も火力発電によるものが大半ですので、販売量の85%が火力発電からの電気です。一般電気事業者も販売している電気の87%が、やはり火力発電によるものです。火力発電のコストを抑制できれば、他社より安い電気を販売可能です。火力発電のコストで最大のものは燃料費です。燃料としては、石炭、石油、LNG(液化天然ガス)が大半を占めます。 輸入統計を基にした石炭、石油、LNG(液化天然ガス)の1kWh当たりの燃料費を上記の表に示しました。最近の化石燃料価格の下落のために燃料費は1年前よりかなり下がりました。いまは石炭が安いので、電気を売るのであれば石炭火力からの電気を使い供給を行えれば競争力があります。
14年度の実績では、一般電気事業者、新電力の火力発電量のそれぞれ26%と31%が石炭火力からの電気です。石炭火力の発電量を増やせば電気は安くつくれそうですが、そう簡単な話ではありません。まず燃料需要が集中すれば調達のリスクが高まります。いまは安い石炭も将来ほかの燃料より安いとは限りません。また、石炭は個体ですので輸送の費用、設備の費用も石油、LNGより相対的に高くなります。さらに、上記の表の通り、石炭は地球温暖化の原因になる二酸化炭素(CO2)の排出量が多いとの欠点もあります。 一般電気事業者と4月以降に家庭向け販売を開始する新電力の発電コストに大きな差はなさそうです。送配電コストは同じです。