男性の体は世間から大切にされないから、セルフケアが苦手なのかもしれない
男性の体は世の中で大切にされないから、大切さがわからない。
福田さん:こういう話って、実は前編でお話した「男性は社会の歯車から降りられない」という問題にも繋がっているんじゃないかと考えているんですよね。 田中さん:鈍感にしておかないと生きづらい、というところもあるかもしれないですね。だって鈍感じゃないと40年近くも働けないですよ。 昔、インタビュー調査をしたときに本当にそう言った方がいました。「ずっと会社で働くとか、満員電車で毎日通勤するとかつらくないですか?」と聞いたら、「慣れて麻痺させて考えないようにすることが社会人の心得なんだ」「僕は何で働くんだろう、なんて考えたら負けなんだ」って。 そりゃ、男性は悩みを言語化できないですよ。麻痺させてるんですから。自分の身体や心の変化を感じられないと、言語化は難しい。麻痺で感じていないことを言葉にするって、多分できないと思います。 福田さん:偉そうなことを言っておきながら、僕も自分の身体性には鈍感なんですよね。今、パートナーが海外留学していて、一人暮らししてるんですが、彼女がいない1年半の間に8キロ近くも太っちゃったんです。「なんかちょっと太ってきたかも?」と体重計に乗ってみたら、8kgも太っていた。恐ろしいことに、途中経過では全く気づいてなかったんですよ。振り返ればジャンクな外食や間食が増え、パートナーと通っていたジムやヨガをサボって運動量が減り……思い当たるフシはたくさんあるのに、気づけなかった。 こういう僕みたいな男性がいっぱいいるんだと思うんですよね。自分の変化に鈍感で、年をとっても自己イメージが変わらず不摂生を続け、自分一人でセルフケアできない、みたいな男性が。 田中さん:「飯食うのが遅いやつは出世できない」とか平気で言う人もまだ多いですよね。心身の健康や心地よさよりも仕事や出世、という感覚がまだあるんですよ。もしかしたらそれが多数派かもしれない。ご飯くらいゆっくり味わって食べればいいのに。 男性の身体って世の中で大切にされていないんです。例えば、男性用トイレの小便器。ちょっと横を見たら隣の人の性器が見えちゃう。女性だったらありえないですよね。僕は、男性用トイレに「こんな構造ありえない!」と感じますよ。他にも男の上裸はOKだったり、世間は男性の身体の扱いがちょっと雑です。 大切にされないから、大切さがわからない。だからケアができない。そんな構造もある気がします。