日本女子4人目のメジャークイーン・古江彩佳のスウィングをプロが解説【勝者のスウィング】
「アムンディ・エビアン選手権」で日本勢4人目のメジャー優勝者となった古江彩佳。プレッシャーのかかるバック9で逆転し、みごと優勝したスウィングをみんなのゴルフダイジェスト特派記者でプロゴルファーの中村修が解説。 古江彩佳のドライバー連続写真はこちらから
感情を表に出さない冷静沈着なプレーをする古江選手。優勝を決めるイーグルパットがカップに沈むとガッツポーズ、その後に涙を拭う姿に感動しました。 3年前のこの大会で4位になっていますが、当時目指していた東京五輪の代表を逃し、失意から這い上がるきっかけになった大会でした。期せずしてパリ五輪の代表入りを逃した後の今大会で、メジャー初優勝を成し遂げた古江選手は大きな勇気を与えてくれます。 「悔しさをバネに!」と言葉では言いますが、東京五輪以降、パリ五輪を目指して来た古江選手にとって土壇場で代表入りを逃した気持ちは、我々には計り知れないものだったはずです。多くのメディアに取り上げられるプロスポーツ選手として、打ちのめされた後に立ち上がり、メジャー優勝を勝ち取った古江選手の姿は、心に響く感動や気持ちの強さ、勇気などアスリートの持つ大きな力を感じずにはいられません。
ドローボールを持ち球とする古江選手ですが、その身長からスウィングプレーンはフラットになるため、特に長いクラブにおいてある程度の入射角が必要なフェードボールを打つことは不向きと言われています。 山下美夢有選手もそうであるように、古江選手もドローを持ち球とし、弾道の高さ、曲げ幅をコントロールしながら自分のプレースタイルを作り上げています。
ターゲットに並行な向きのスウィングプレーンの場合、クラブの最下点の手前はインサイドアウト軌道でロフトは立つので弾道は低いドローになり、最下点に近くなるとインサイドアウト軌道は緩やかになりロフトは番手のロフト角の通りにボールに当たるため、曲がり幅の少ない高い弾道のドローになります。 こういったメカニズムを理解し、どの選手もボール位置やスウィングプレーンの向きをアレンジしながら、ボールのライや風など状況に応じた最適な弾道にコントロールしています。 さらに古江選手の強さは、どんなスタイルの選手と対峙しても自分のプレースタイルに徹する点にあると考えます。 終盤にロングパットを決めた3連続バーディから、最終ホールでは果敢に2オンを狙って「プレーオフにはしたくない」とイーグルパットを決め切るという、メジャーの最終日のバックナインでスコアを伸ばせる姿こそ、古江選手の強さを物語っていたのではないでしょうか。 パリ五輪を前にフランスの地で光輝いた古江選手に、大きな拍手と敬意を表したいと思います。メジャー初優勝おめでとうございました。 写真/ヒルトン・グランド・バケーションズ・トーナメント・オブ・チャンピオンズ 2024 撮影/Yasuhiro JJ Tanabe
プロゴルファー・中村修