「青いケシ」が咲かない…5千株が広がった農園に今年はわずか“数株” 営業は取りやめで危機 地球温暖化の影響か
なぜ?今年は一段と状況が悪化
「ヒマラヤの青いケシ」と呼ばれるメコノプシスを育てる長野県大鹿村大池高原の中村農園で、今年はわずか数株しか花が咲かず、観光農園としての営業を取りやめた。 【写真】1株だけ咲いていた青いケシ
最盛期は数千株が咲き誇り、多い時は1日千人以上の観光客が訪れる観光名所となっていたが、近年は温暖化の影響からか花の数が減少。今年は一段と状況が悪化したため、来園希望者の受け入れを断る事態となっている。
温暖化の影響からか
農園では10年ほど前まで、5千株以上が花を咲かせた。管理する中村元夫さん(81)によると、例年、開花する6月ごろから観光客を受け入れてきたが、昨年は約15アールの畑で約30株までに減少し、受け入れ期間を短縮。今年も「花を見たい」と各地から来園希望の声が寄せられているが、すべて断っている。
農園の歴史は約30年にわたる。中村さんは地元の農協に勧められてコメ農家から切り花農家に転身。大阪の市場を視察した際に高値で取引されているのを見たメコノプシスの苗を取り寄せ、1994年に栽培を始めた。
当初栽培した標高1200メートルほどの場所ではうまく育たず、現在の標高約1500メートルに場所を移して種から育てると徐々に株が増え、青い花の広がる光景が評判になった。開花時期の1カ月半の間に中京圏などから約1万2千人が来園した年も。山林を一部切り開いて整備した80台分の駐車場はすぐ満車となる人気ぶりだった。
数年前から思うように咲かなくなり…
ところが、数年前から花が思うように咲かなくなった。「温暖化が一番の要因だと思う」と中村さん。以前は3月ごろまで雪に覆われていたが、近年は1月ごろに解けてしまうため「雪が減り、水分量が不足しているのでは」と推測する。
「もう青いケシを毎年育てるパワーが…やる気のある人がいれば教えるんだけど」
中村さんは標高の低い別の場所で切り花用にマツムシソウ、エキナセアなどの品種も栽培しているが、高齢のためメコノプシスの管理が難しくなっている。村は昨年、農園管理を引き継いでくれる人材として、地域おこし協力隊員の募集を開始。中村さんも「もう青いケシを毎年育てるパワーがない。やる気のある人がいれば全部教えるんだけど」とこぼすが、まだ後継者は見つかっていない。
中村さんは栽培を始めた当初、目を見張る青の美しさに心を奪われた。観光客のいない静かな農園に1株だけ咲いていた花を見つめ「1輪だけでも絵になる花なんだ」。さみしげな表情でつぶやいた。