CTC新社長が語る「DX事業を推進する伊藤忠グループでの役割」とは
「IBMは真にオープンな生成AIの基盤モデルを提供したい」(日本IBM 執行役員 IBMフェロー IBMコンサルティング事業本部 CTOの二上哲也氏) 日本IBMは先頃、米IBMが5月20日から4日間、米国ボストンで開催した年次イベント「Think 2024」で紹介したAIなどの最新の取り組みについて、日本のメディア向けに説明会を開いた。二上氏の冒頭の発言はその会見で、IBMが提供する生成AIの基盤モデルが真にオープンであることを強調したものである。 二上氏によると、今回のThinkでは、「企業が生成AIを活用し、大規模にビジネス価値を創出できるようにする」ことをテーマに、「IBMの基盤モデル『Granite』をオープンソース化して同社のAIのさらなるオープン戦略を推進する」ことと、「IBM製品に生成AIを組み込むことで製品機能を高度化し、顧客の業務の生産性向上を促進する」ことに注力していく姿勢を明らかにした。 今回のThinkで公表された内容については発表資料をご覧いただくとして、ここでは二上氏の発言に注目したい。 今回のThinkでオープンソース化を明らかにしたGraniteの「オープンな基盤モデル」としてのユニークな立ち位置について、同氏は図1を示しながら次のように説明した。 「基盤モデルは専有モデルとオープンモデルに分かれる。専有モデルは誰でも利用することができるが、基盤モデル自体をダウンロードすることはできないし、そこから自社専用の基盤モデルを作ることもできない。一方、オープンモデルにはエコシステム型とオープンコミュニティー型がある。いずれも基盤モデル自体をダウンロードでき、そこから自社専用の基盤モデルを作ることもできる。2つの型が異なるのは、エコシステムではモデル本体の拡張ができるのは基本的に1社のみだが、オープンコミュニティーではモデル本体を拡張するコミュニティーに参加でき、継続して拡張できるオープンな仕組みが用意されていることだ」 その上で、同氏はGraniteをオープンコミュニティー型の「真にオープンな基盤モデル」だと強調した。IBMは生成AIのオープンコミュニティーとして、2023年12月にMeta Platforms(旧Facebook)と共に発起人となって「AI Alliance」を立ち上げた。およそ半年たった今では、世界の100以上の企業や大学などがメンバーとして参加する国際的なAI推進コミュニティーとなっている。 このAI Allianceについては、発足時に日本で行われたキックオフイベントを取材して、2023年12月21日掲載の本連載記事「AI Allianceは生成AIの第三勢力として存在感を発揮できるか」をまとめたので参照していただきたい。 ちなみに「第三勢力」というのは、生成AIをめぐる勢力争いとして、現時点ではOpenAIとMicrosoftの陣営がリードし、GoogleやAmazonが対抗する構図の中で、AI Allianceは「オープンであること」を旗頭に新たな勢力になるのではないかという筆者の見立てだ。 筆者がそう見立てたのは、キックオフイベント時の記事でも取り上げたIBMシニアバイスプレジデント兼IBM ResearchディレクターのDario Gil(ダリオ・ギル)氏の次の発言が印象深かったからだ。 「AIをごく少数の企業や組織がリードする形にしてはならない。ITの歴史を振り返ってみると、過去にも今と似たようなことがあった。例えば、コンピューターOSの話。オープンソースコミュニティーによってLinuxが生まれ、今ではサーバーOSとして定着し、多くのユーザーの支持を得ている。AIにおいてもオープンソースの開発力は必要になる。また、AI Allianceには世界の名だたる企業や大学が参加しており、これから実際にさまざまなプロジェクトを通じて共創活動を行っていく。これまでAIに対する社会的な議論が不十分だった。これからはその議論を建設的に進めて行動していくことが大事だ。AI Allianceがその動きをけん引していきたい」 AI Allianceは果たして生成AIの第三勢力になり得るのか。二上氏の説明を聞いて、改めて勢力争いについても引き続き注視していきたい。