リアル90歳で、「九十歳」を演じ切った草笛光子さん。「女優には年はない」を体現する奇跡の女優
◆とにかく軽やかでいらっしゃる 草笛さんはSKD(松竹歌劇団)御出身だからでしょうか、とにかく立ち姿や身振り手振りが美しくて、とてもではありませんが90歳には見えません。しっかりした発声と見事な滑舌で、イベント後もお一人で地方のテレビ局向けのVTR録りをされていたのです。 その声は、何枚もの間仕切りを超えて、大きな会議室に響き渡り、特に『九十歳。何がめでたい』の絶妙の間と抑揚をつけたタイトルコールの可笑しみと言ったら、ありませんでした。 その後は、ドレスからシャーベットカラーのパンツスーツに身を包み、キャストやスタッフの皆さんが待つ「乾杯」会場へ入られた草笛さん。 スタッフが構えるスマホカメラに向かって、昭和のピースも、令和の若者がとるポーズもなんなくこなすなど、とにかく軽やかでいらっしゃるのです。 そんな草笛さんだからでしょうか。拝見した映画のメイキング映像でも、イベント中も、エスコートなどはしていても、前田監督をはじめ、キャストの皆さんたちが草笛さんをちっとも“年寄り扱い”していないのです。
◆若い俳優でも、なかなかできない 映画『老後の資金がありません!』でも草笛さんとタッグを組んでいらっしゃる前田監督。そのツッコミは容赦なくて(苦笑)、現場で監督の演出以上に張り切って動いたり、その場からハケなければならないのに残ったりする草笛さんに対し、食い気味に注意されるのです。 公開前日イベントの段取りについて、「いつものように唐沢さんと真矢さんには草笛さんをエスコートいただいて……」とスタッフから説明された際にも、唐沢さんは食い気味に「え~ッ?」と嫌そうなリアクションをなさるのです。もちろん冗談ですが、草笛さんには冗談が通じると思っているからこそのこと。 それでも、映画の見どころを「それはもう、草笛さんのマシンガントークですよ」とズバリ仰り、若い俳優でも、なかなかできないと言い切ったのは唐沢さんでした。 草笛さんと所属事務所が同じ真矢さんは、草笛さんの自由な働きぶりに驚き、尊敬もされていました。ちなみに真矢さんは草笛さんの娘役、そして孫役は藤間爽子さんです。 宝塚のトップスターだった真矢さんと、「三代目 藤間紫」として日本舞踊紫派藤間流の家元を務められている藤間さんは、SKD出身の草笛さんに対し、なみなみならぬ想いと共に、色々なことを聞いてみたい様子。大先輩から、多くのことを吸収させてもらいたいと思っているように見えました。