パス・サッカーで「強い川崎」は復活できるのか(2)天才・中村憲剛、日本代表の三笘薫らがいた「全盛期」との違い、研究・対策の前に進化を止めた「風間理論」
■ゆっくり回しているのに「奪えない」パス
全盛期の川崎は、とにかくショートパスを回し続けた。パスを回し続ける中で、相手の分厚い守備網の中にスペースを見つけると、そのスペースを狙って選手が入り込み、パスを通して一気に攻め込む。そこで、さらに相手陣内深くでパスを回して、再びスペースを作って攻める……。 もし、そのスペースを埋められてしまったら、無理にパスを通すのではなく、必ず攻撃を中止して、いったんボールを戻して、再びパスを回しながら相手陣内にスペースが生まれるのを待つ。 そして、その間、ゆっくりとパスを回しているにもかかわらず、相手はチャレンジすることもできなかったのだ。 大きなスペースを見つけて走らなくても、ほんの1~2メートル動くことで相手のマークから逃れることができれば、それはフリーになったのと同じだった。ちょっと、体の向きを変えるだけでも、マークは無効化できる。 そうした作業を丹念に行いながらパスを回すから、川崎のパス回しは非常にゆっくりしているにもかかわらず、相手チームはチャレンジに行けなくなってしまうのだ。 2012年から5年間、川崎で監督を務めた風間八宏(現、南葛SC監督)が落とし込んだ戦い方だ。
■進化させる必要があった「マークを外す」作業
少し動くだけでスペースを作れるし、相手のマークを外すことができる……。 それが、独特の風間の理論だ。そうした指導を通じて筑波大学を強豪校化した風間は、川崎でも指導を続ける。成果が表れるまでには時間がかかったが、チーム全員が同じような絵を描いてサッカーをするようになっていった。 ただ、風間は勝利や優勝といった「結果」にこだわる指導者ではなかったので、風間在任中はタイトルに手が届かなかった。だが、勝負にこだわる指揮官、鬼木達が跡を継ぐと、その風間が築き上げたパス・サッカーを生かして川崎は「絶対王者」となった。 だが、それから時間が経過し、選手が入れ替わるうちに、かつてのようにしっかり動くことによってスペースを作り、マークを外す作業が十分にできなくなってきてしまったのではないか。 そうした事前の作業を怠ったまま、かつてのように短いパスを回そうとすると、相手にカットされることが多くなるのは当然のことだ。 さらに、川崎がリーグ戦のタイトルを独占する間に、対戦相手は川崎のパス回しの分析・研究を繰り返してきた。なにしろ、Jリーグは相手に対して戦術的対策をしっかりするのが特徴のリーグなのだ。 川崎がパス・サッカーを継続しようとするなら、マークを外してフリーな状態を作る作業をさらに進化させる必要があったのだろう。 だが、それができないまま、自分たちのサッカーにこだわることで、川崎のパス・サッカーは行き詰まりを見せてしまったのだ。
後藤健生
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