【9番街レトロ・京極風斗】0か100かで生きてゆく。
神保町よしもと漫才劇場を拠点に活動している芸人「9番街レトロ」の京極風斗(きょうごく・かざと)さんは、極端なほどに“0か100か”で生きている。その一方で、“50”の生き方ができる人を羨ましいとも感じているんだとか。どんな生き方であれ、自分自身が幸せだと感じることができ、後悔しないことが素敵な人生の歩み方なのかも。 【9番街レトロ・京極風斗】「まだ僕は、0か100かで生きてゆく」
9番街レトロ・京極風斗
連載【0か100かで生きてゆく #70】 ー 0か100かで生きてゆく。 ー
Illustration: Kazato Kyogoku
それぞれの生き方
最近、自由に使えるお金が少しあります。 そりゃあ上を見上げればまだまだでございますが、一社会人として、ある程度の贅沢はできる程度のお金があります。 割と最近まで200万円ぐらいの借金がありましたので、その頃に比べると雲泥の差でゆとりがあります。 では今、借金をしていた頃より幸せかと問われると、別にそんなこともありません。 どちらもほぼ等しく幸せです。 生活水準には変化が無いからです。 元々稼ぎに対して使う額が大き過ぎたためにできあがった借金であり、その当時とほぼ同じ生活のまま、それに見合う収入になっただけでして。 変わったのは口座の残高だけで、クレジットカードの上限額は同じままなので、特別生き方が変わったわけではありません。 金銭面で言うと、僕の体感ではカードが使えるか使えないかだけが全てであり、銀行とVISAの間でどのような数字のやり取りがあったかなんてのは知ったこっちゃないですからね。 使える合法のお金があるのなら、それがどこから出てきたものでも同じことです。 これもまた0か100か精神であり、悪く言うなら、責任感のない生活。良く言うなら、ある意味お金に悩まされることのない生活です。 たまたま上手くいっただけで、いつ破産してもおかしくなかったんですけどね。 でも関係ありません。 僕は幸せなんですから。 あなたも、あなたが幸せなら何をしたっていいんです。 本気で好きな人なら、奪ってでも手に入れていいんです。奪えたということは、あなたの方が魅力的なんですから。 本気で嫌な仕事なら、飛んでしまえばいいんです。あなたの心の方が大事なんですから。 本気で邪魔な家族なら、縁を切ってしまえばいいんです。それほど恨めしいなら、それはもう他人なんですから。 僕は心からそう思っています。 そう思っていますが。 一般論で言えば、それらはただのワガママです。 そのワガママで割を食うのは、周りの人間です。 結局、0か100かの生き方ってのは、そうではない誰かに迷惑をかける生き方なんですな。 こちらのコラム、第1回でもお話ししたように、僕は文章を通して何かを啓発するつもりはなく、ただ、僕の考え方を記しているだけであり、やはり50の生き方を推奨しております。 好きな人に相手がいるなら心の中だけで別れることを静かに願える、上手にストレスをはきだしながら嫌な仕事をこなせる、適切な距離感で邪魔な家族を視界から消せる、そういう人間が強くて立派で素敵なんです。 0か100かの生き方。 それにより輝いているのは、鏡で見た自分だけであり、周りからは酷く濁って見えているのかもしれません。 自分にしかできない何かがある間は持ち上げてもらえますが、いつか才能が涸れたその時、周りに人がいるかしら。 せめて、上手に50ができる皆様への感謝を忘れずに、将来自分自身が少しでも50をこなせるように。 それが無理なら、本物の孤独を受け入れる覚悟を持ちましょう。 本当は50ができる人が羨ましいんです。 それができる人間になってみたいんです。 しかしどんな結果であれ、後悔はせぬように。 まだ僕は、0か100かで生きてゆく。 ●連載『9番街レトロ・京極風斗の0か100かで生きてゆく』について編集部よりお知らせ 2021年8月よりスタートしてから3年、NET ViVi史上最長となった連載は#70「0か100かで生きてゆく。」で最終回となります。 これまで楽しみに読んでくださった皆さん、長きにわたりご愛読いただきありがとうございました! 2024年7月 講談社ViVi編集部 ●PROFILE 京極風斗(きょうごく・かざと) 1995年8月9日生まれ。大阪府出身。吉本興業所属のお笑いコンビ。2019年4月1日に9番街レトロを結成。神保町よしもと漫才劇場を拠点に活動中。 個人チャンネル「京極風斗の道楽ちゃんねる。」ではアートとインテリアを軸に、好きなことを配信。 コンビのYouTubeチャンネルでは日々の出来事やネタの動画を配信。 そのほか、絵が得意で自らデザインしたオリジナルグッズをSUZURIで販売している。 Instagram @kazato.kyogoku --------------- Text & Illustration: Kazato Kyogoku
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