小林悠×太田宏介スペシャル対談。目の当たりにした三笘薫、旗手怜央、田中碧の異質ぶり。気付くべきサッカー人生の短さ
「1日1日を大切にすることは何より大事」(小林)
――では改めて、おふたりが考えるプロ選手として大事なこと、そして後進たちに伝えたいことはありますか? 小林 なんだろう、難しいですね。でも先ほど話したように、歳を取ってくると余計に感じますが、時間って思ったよりない。自分も若い時はそんなこと気にしていなかったけど、サッカー選手でいられる時間って本当に少ない。あっという間。だからやっぱり1日1日を大切にすることは何より大事かなと。 それぞれにやり方はあると思うのですが、練習前の準備であったり、プロでいられる時間の使い方は、より意識したほうが良いとは学んできましたね。その意味では、もっとサッカーに対して真剣に、貪欲に、やってもいいのかなとも思います。 太田 それは間違いないね。 ――若いうちからそういうところに気付けるかどうかですね。 小林 選手人生まだまだっていう気持ちになるのは分かるんです。自分もそうだったので。でも年を取ってくると感覚が変わり、そうじゃないんだぞと教えてあげたいなと。それこそ、海外に行った(三笘)薫、(旗手)怜央、(田中)碧らは、食事、睡眠などに関する意識が全然違いましたね。なんだか見ている世界が違うというような...。 太田 今、悠が言ったことですよね。その意味では、身近な環境でそれを感じられるか、チームメイトにそういう先輩がいるかも大事で、フロンターレの若い選手は悠を含めて勉強になる背中を近くで見ているはずだから、良い環境にあると言えるんじゃないですかね。 ――では、小林選手の今後の目標は? 通算得点で言えば、小林選手は現在141ゴールで歴代7位。歴代6位のマルキーニョスさんは152得点で、歴代1位の大久保嘉人さんは191得点です。 小林 嘉人さん超えにはあと50ゴール。これは諦めました(笑)。次のマルキーニョスも少し離れているんですよね。でもやっぱり1ゴールでも多く取りたい。子どもたちにひとつでも多くのゴールを見せたいですね。 太田 俺にも? 小林 いつも見てないでしょ? 太田 失礼な、ダ・ゾーンで毎回チェックしているよ(笑)。 小林 いやでも宏介がさっき言ってくれましたけど、自分がゴールを決めることで、喜んでくれたり、元気になってくれる方が、家族を含めていてくれるなら、自分は最後までゴールを目指し続けなきゃいけない。諦めちゃいけないと思うので、やり切るだけですね。 ――太田さんは改めて小林選手に期待することは、どうですか? 太田 まずはユニホームを(笑)。というのは冗談で、1年でも長く、1試合でも多く、1点でも多くというのが、僕だけじゃなく、小さい頃から悠を見ている仲間たちも含めた願いですし、それはフロンターレのサポーターの方々も同じだと思います。ただベテランの苦しみも自分は知っているし、長くやれば良いってもんでもない。身体と心の問題も色々あるだろうから。だから一番は楽しんでもらいたいという、そこですね。 小林 そうだね、楽しみながら、頑張りたいと思います!! 取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部) ■プロフィール こばやし・ゆう/1987年9月23日生まれ、東京都出身。177㌢・72㌔。町田JFC―町田JFC Jrユース―麻布台附渕野辺高―拓殖大―川崎。J1通算388試合・141得点。日本代表通算14試合・2得点。川崎サポーターに愛され続ける魂のストライカー。 おおた・こうすけ/1987年7月23日生まれ、東京都出身。179㌢・78㌔。つくし野SSS―FC町田―麻布台附渕野辺高―横浜FC―清水―FC東京―フィテッセ(オランダ)―FC東京―名古屋―パース・グローリー(オーストラリア)―町田。J1通算296試合・11得点。日本代表通算7試合・0得点。レフティSBとして活躍し、昨季限りで現役を引退。現在は町田のアンバサダーなどを務める。