看護の道(11月30日)
検温、脈拍計測、投薬、点滴。緊急ボタンを押せばすぐに駆けつける。看護職員の機敏な所作と温かな声かけに誰もが励まされる。時には孤独で不安な入院生活を心身両面で支えてくれる▼看護職養成校の入学者数が定員を下回り、閉校するケースもあると報じられた。新型コロナ禍により看護職員が多忙を極めた影響で、若者を中心に敬遠される傾向が強まっているという。医療は医師だけでは成り立たない。命を守る最前線の将来が心配でならない▼福島市に暮らす10代の女性は市内の看護専門学校で学んでいる。医療人としての責任の重さを自覚する「戴帽式」を経て今月、病院での実習を始めた。母親は看護師。感染症が猛威を振るった4年前、帰宅は連日深夜に及んだ。休日も外出を極力避け、自衛に徹する後ろ姿を見てきた。「母のような人に役立つ仕事がしたい」。迷いなく憧れの道を歩む▼職務の崇高さを若い世代に知ってほしいと、県看護協会は小中学生向けの体験会を今年初めて開いた。看護職員を増やす特効薬はどこかにないか。母から子へ、子から誰かへ看護の道がつながる処方箋が早く欲しい。緊急ボタンを押しているのは入院患者だけではない。<2024・11・30>