「激務」の京都市長、給与安すぎ?20年以上大幅カット 適正化は市民の理解得られるか
市長の給与はいくらが妥当なのか―。京都市は適切な金額を検討する有識者会議を23年ぶりに開催する。厳しい財政状況を背景に、20年以上も給与カットが常態化してきたが、2月に就任した松井孝治市長による「市政の再点検」の一環で有識者による見直しが進められることになった。ただ、何をもって適正額とするのかは難しく、市民にとって納得感のある結論が出るか注目している。 【写真】京都市の松井市長 市長給与は、市が「財政非常事態宣言」を出す直前の2001年から15%カットが始まった。リーマン・ショックの影響を受けた09年に20%に、門川大作前市長が「このままでは財政破綻しかねない」と宣言した21年には30%にそれぞれ引き上げた。 松井市長も30%カットを引き継ぎ、年収は条例の規定額(2554万円)より763万円少ない1781万円。副市長3人も12%カットしており、それぞれ規定額(2013万円)より241万円少ない1772万円となっている。20政令指定都市の中で、条例上の京都市長の年収は5番目に高いが、30%削減後は17番目と大きな乖離(かいり)がある。 なぜ、そうした状態が23年間も放置されていたのか。ある市幹部は「財政難で市民サービスをカットする以上、トップは覚悟を示す必要があった」と話す。確かに「○%カット」という表記は分かりやすく、納税者の理解が得やすい側面もあるだろう。 京都の厳しい選挙情勢も背景にありそうだ。伝統的に共産党勢力が強い上、近年は公務員の給与カットなどを訴えて勢力を伸ばした日本維新の会が存在感を高めている。過去の市長選でも給与カット維持や引き上げを公約に掲げてアピールする候補者もいて、「やめたいのにやめられない、ジレンマに陥っていた」(市幹部)。 松井市長自身も8月の記者会見で「市長が選挙などを意識して、カットをアピールするやり方は見直した方がいい」と本音を漏らしていた。物価高などの社会情勢を踏まえ、適正な給与額の判断を有識者に委ねることは理解できる。 ただ、市長や副市長は特別職で、勤務時間の定めはなく、どこまでが公務か線引きすることは難しい。庁内からは「あの激務で今の給与は安いくらい」との声も出ているが、仮に、有識者による報酬審議会が市長給与を増やすべきという結論に至り、市がそれを採用した場合、市長の仕事内容も含めてしっかりとした根拠を市民に示す必要があるのではないか。 ちなみに、報酬審は市長のほか、副市長3人や市議67人の報酬についても議論する。だが、市議会は厳しい財政状況に配慮して、今年1月から現任期満了の27年3月までの議員報酬20%カットを決めており、報酬審の結論を即座に採用するかどうかは不透明だ。 カット後の月額報酬(正副議長除く)は76万8千円。ある中堅市議は「生活や日々の活動にお金がかかり、決して裕福な生活はしていない」と前置きした上で、「議員は本音では報酬カットを嫌がっている。パフォーマンスはそろそろ終わりにして、公平な目で適切な報酬額を決めてほしい」と打ち明ける。 給与・報酬の見直しが、市議や議員の仕事の「見える化」につながることを願う。