『Cloud クラウド』は”怖い”?”笑える”?黒沢清監督「皆さんの記憶の奥に深く残ってくれたら」菅⽥将暉は監督の作風と人柄のギャップに驚き
第81回ヴェネチア国際映画祭と第49回トロント国際映画祭に出品され、第97回アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表にも選出されている黒沢清監督の最新作『Cloud クラウド』。本作の公開記念舞台挨拶が9月28日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで開催され、菅⽥将暉、奥平⼤兼、岡⼭天⾳、荒川良々、窪⽥正孝、⿊沢監督が出席した。 【写真を見る】菅⽥将暉、奥平⼤兼の私服に「怯えた!この世の20代で一番個性がある」と告白 本作は、ネット社会に拡がる⾒えない悪意と隣り合わせの“いま”ここにある恐さを描くサスペンス・スリラー。転売で稼ぐ主⼈公の吉井役を菅⽥が演じた。菅田は「無事に公開ができて、お客さんが入っている景色を見られてうれしいです」と感無量の面持ち。黒沢監督は「映画のなかではみんなひどいことばかりしていましたが、このように実はいい人たちばかり。そこは誤解のないように」と役者陣に愛情を傾けながら、笑いを誘っていた。 早くもいろいろな感想が上がっている本作だが、各国の上映でもそれぞれの反応が見られるという。黒沢監督は「ヴェネチアでは固唾をのんで見ている感じ。トロントでは、驚きで『うわあ』と笑う感じ。ここで笑うのか、という感じがあった」と回想。実際に上映後の会場に向けて拍手でアンケートを取ってみると、“笑い”よりも“怖い”という感想が大多数だった。一方で「笑いが多かった」という感想を伝えるべく、熱心に拍手を送る人も見受けられた。 菅田も不思議な笑いを体感したそうで、「悪の軍団の皆さんのシーンは、笑っちゃいました。爆笑というわけではなく、怖すぎたり、気持ち悪すぎて笑っちゃいました」と劇中の怪しげな男たちを絶賛。大半の場面でマスクをかぶったままの姿で登場する三宅役の岡山は、「ほぼ顔が出ていない」と苦笑いを見せた。 窪田は「あれ(マスク)、自分で作ったの? (マスクの上に乗った)微妙な毛、あれは地毛?」と三宅のマスクに興味津々だったが、「地毛じゃないですよ。怖すぎるでしょう!」と笑った岡山は、「目の位置を微調整していただいたりと、何パターンも作っていただいた」とマスクの制作過程について裏話を披露。“三宅がありものでマスクを作った”という設定となり、黒沢監督は「安っぽい感じの袋も、その上に乗っている毛みたいなものも、どちらも100円で買えます。袋だけだと味気ないので、もう一発なにか100円のものでなにかですかとお願いをした」とスタッフに依頼したと明かすと、菅田は「200円で三宅になれるんだ」と楽しそうに話していた。 劇中では怯えた表情をたっぷりと見せた菅田だが、最近「怯えていること」という質問が上がると、菅田は「⼤兼くんの私服には怯えました」と回答。奥平が「ええ!本当ですか!?」と驚くなか、菅田は「20代で一番個性があると思う。この世の20代で一番。洋服が大好きだから、自分でも作るんだよね。ある日、緑系で統一している日があった。全身、緑。なんならエメラルドグリーン。すごかった。カッコよかったし、洋服が好きなんだろうなと思った」という。黒沢監督もその私服を覚えているそうで、「何者かと思いました」とにっこり。さらに菅田が「僕は勝手にかまされたなと思いました。あれはぜひ続けてほしい」と個性的なファッションをどんどんしてほしいと背中を押すと、奥平はその日のファッションを「覚えていない」と照れ笑いをのぞかせた。菅田は「それが覚えていないくらい、普通ということも怖い」と目尻を下げていた。 また「いい意味で裏切られた」と思った人を、それぞれが指差し棒で示して答えるコーナーも。黒沢監督を指し示した菅田は、「こんなにフランクにしゃべってくださるのは意外でした」としみじみ。荒川も「作風とのギャップがあった」と同調した。黒沢監督は窪田を示し、「初めてお仕事をした。クールで物静かな印象があった。ピストルが出てくるような映画を何本も撮っていますが、現場でピストルを見てあんなにはしゃいだ人を初めて見ました。それだけ陽気に、楽しく振る舞ってくれた」と窪田の意外な一面を見たと話す。窪田は「そっくりそのままお返しします。監督もクールな方かなと思ったら、すごく陽気。銃のシーンとか、監督が一番ニヤニヤしていた。監督も楽しそうだった」と相思相愛の想いを打ち明けていた。 黒沢監督は「特に菅田さんのお芝居が秀逸だなと思ったのは、最後の最後。あの表情、最高でしたね。すごく胸を打ちました」と人間の情けなさや、そこからにじむ愛らしさまでを表現した菅田を称える場面もあった。最後の挨拶で黒沢監督は「あまりこれまでに観たことのないような映画だと思われた方も、結構いらっしゃるんじゃないかと思います。こういう映画もあるということを知っていただけたらうれしい」と切り出し、「変な映画だと思われたかもしれません。その分、皆さんの記憶の奥の方に深くこの映画が残ってくれたらいいなと思います。何年か先、何十年か先、だいぶ前に変な映画を観たなと思い起こしてくれたらうれしいです」と心を込め、大きな拍手を浴びていた。 取材・文/成田おり枝
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