岩石ゴロゴロ! 神話の舞台、高千穂峰で開運登山
歩いて知る火山活動の痕跡
火山らしい、草木のほとんど生えていない荒涼とした赤いザレ場はとても歩きにくく、3歩進んでは2歩戻るように足を取られてしまう。安定して動かない石に足をかけて登っていくが、ときおり足を滑らせてしまう。そのたびに気持ちが萎えかけるが、年配の登山者も多く、その姿を見、声をかけられると少し元気が湧いてくる。見知らぬ人と気軽に会話ができるのも、登山の大きな魅力だ。
ゴロゴロしている岩石の多くは「スコリア」と呼ばれる多孔質の黒い火山噴出物。噴火するときにマグマ中のガスが発泡してできた無数の穴があり、非常に軽い。ちなみに同じ噴出物でも色が白っぽいものは「軽石」と呼ばれる。色の違いは,マグマの化学成分の違いでシリカ(二酸化ケイ素)成分が多いほど白く、少ないほど黒くなる。火山帯特有の景観を楽しめる高千穂峰登りの醍醐味は、少し足を止めて、足元の石を見て楽しむことにもある。
ザレ場を上りきると、唐突に巨大な火口が現れる。直径約600m、深さ約200m。展望が一気に開け、霧島山の連峰や桜島などを見渡せる。そのダイナミックな火口と景色の感動は、先ほどのザレ場での恐怖も忘れるほど。標高1420mにある御鉢からは、山肌が崩れて剥き出しになった地層を間近に見られる。地層好きにはたまらない光景だ。
御鉢から、幅の狭い馬の背(尾根)を進んでいくと、奥にもうひとつ山が見える。そこが高千穂峰山頂。まだ、第一関門クリアといったところだった。「また歩くのか……」とひるみそうになるが気合を入れ直して、山頂まで最後のひと登り!
馬の背を歩いていったん鞍部へと下り、最初に霧島神宮が置かれた元宮の鳥居をくぐってラストスパート。案内板には「山頂まで220m」と記されている。次の案内板には「180m」。その間、けっこう歩いたように思ったが40mしか進んでいなかった! 木製階段が整備されているが、急勾配のうえ火山礫と火山灰が積もっていて滑りやすく、登りにくい。その後も「130m」「100m」と、案内板の数字が減っていくことに励まされながら頂上を目指す。