福島市公設市場建て替えへ 新鮮食品 市民に直売 2032年度供用開始目標 食堂整備構想も
開設後50年以上が経過し、建て替えの検討が進められている福島市公設地方卸売市場の再整備計画が明らかになった。従来の市場機能に加え、卸売市場ならではの生鮮食料品を一般向けに販売する直売機能を持たせる計画。新鮮な品を市価より安く販売し、市民の生活を支える。市民が普段から気軽に利用することで市場を身近に感じてもらう。早ければ2032(令和14)年度の供用開始を目指す。 現在、同市場では、野菜や果実といった青果、海産物、花卉(かき)の卸売業者が操業している。直売施設では、こうした産品を販売する予定。配送コストや仲介業者などが少なく済むため、鮮度の良い品を市価より安く販売できるメリットがある。地場産品や魚介類などを使った食事を提供する食堂の整備構想もある。 日常的に市場を利用するのは、卸売業者や仲買人が中心。一般市民が市場で青果や鮮魚などを直接購入する機会はほとんどない。関係者によると、富山市卸売市場で建て替えに伴う余剰地に商業施設を整備する計画はあるが、一般人が食品などを購入できる機能を卸売市場内に設けるのは珍しいという。
福島市公設地方卸売市場では毎年秋に「市場まつり」を開催し、青果や魚介類、加工品などを市価より安く販売している。物価高などの影響もあり、今年10月の開催時は前年を上回る約3万8千人が訪れた。事業の企画・運営に携わっている市公設地方卸売市場協会長の石本朗さん(73)=福島丸公会長=は「市場は生活に直結し、市民の暮らしを支えるのになくてはならない。多くの人が普段から足を運ぶ施設になってほしい」と期待する。 災害に強い市場施設の構築も進める。東日本大震災時に電気系統に被害を受けた経験を踏まえ、災害時にも食料品の流通拠点としての機能を維持させるため、非常用発電機や蓄電池の導入などを検討する。 ■市場機能3割縮小 市によると、現在の市場は1972(昭和47)年に開設された。主な施設は青果棟、水産物棟、倉庫、関連店舗などで延べ床面積計3万4800平方メートル。市場取扱数量は直近10年で約3~4割減少しており、市は建て替え後の市場機能の延べ床面積を約3割縮小する方向で調整している。敷地内の余剰地に、直売施設などを設ける方向。
市は2026年度から新市場の設計に入りたい考え。供用開始時期は進捗(しんちょく)次第で変わる可能性があるが、2032年度を目標に掲げる。 市場施設は、設計、建設、維持管理、供用後の運営業務までを一括で担う民間事業者と契約する「BTO方式」を採用する見込み。供用後を見据えた設計や建設がしやすくなり、個別契約より事業費を抑えられる。買い物・食事などの市民利用機能は民間収益事業として民間事業者に土地を貸し付け、整備を進める計画。市は2025年度に事業者を公募し契約締結を目指す。