〈獄中手記〉「誰も私を愛してくれない、誰も私に興味がない、死ぬことさえできない…」生活保護、格安風俗、売掛金の保証人、違法売春パーティ…陥った負のスパイラル。元“パパ活女子”が伊藤りの被告が今思うこと
生活保護から格安風俗嬢へ
《ある日ふいに上京し、私は何のアテもなくさまよった。母の彼氏の財布からお金を抜き、逃げるように東京へ出た》 学校も仕事も長続きしないなか、27歳で生活拠点を東京へと移した伊藤被告。 しかし、東京へ来たからといって、何かが変わるわけでもない。歌舞伎町をふらつき、ネットカフェに泊まり、ぼんやりと時間をつぶす日々。 盗んできた約10万円はみるみると減っていき、仕事もなかなか見つからない。そこで頼ったのは生活保護だった。 《なんとかしないと。今夜中に…。と夜中の間中調べていく中で、生活保護受給を支援する団体のサイトに行き着いた。LINEで相談に乗ってくれるという。(中略)あっさりと「大丈夫ですよ」と返信が来て、朝には千葉県内の不動産屋へ行くように指示があった。そこからは思っていた以上に早い展開が待っていた。不動産屋への相談の翌日には私は、千葉県柏市のアパートの一室にいた。(中略)ロフト・クローゼット付きで、風呂トイレ付き。充分な部屋だった。》 住む場所と食べ物が保障される生活のなかで、本格的に暇を持て余すようになった伊藤被告は、30分4000円以下の格安風俗で働くようになる。 《そんな生活の中で、ふいに知り合った3つ年上の女、Gが、私のアパートにころがり込んできた。出会ったのは風俗のバイトで同じ客についた事で、その日に「ホストに行かない?」と誘われたのがキッカケだった。(中略)1人上京し、家族から縁を切られ、友人という友人もいなかった私は、気軽に話をできる友人がほしかったため、Gからの誘いを何気なく了承した。》 しかし、ホス狂のGからその後、「3000円貸して」など事あるごとに金を無心されるようになり、あろうことか、Gがホストクラブで背負った売掛金の保証人となってしまった。そして、Gはほどなくして蒸発した。
「事件の始まりはずいぶんと前だった」
売掛金の支払いを迫られた伊藤被告は闇金に手を出すなどしてさらなる経済的困窮に陥る。アパートは退出せざるを得なくなり、生活保護も打ち切られた。そしてたどり着いたのが、個人による違法な売春行為だった。 《私は、柏市に住民票だけを残し、ホームレスになった。風俗の出稼ぎに行ったりするも、上手く指名が取れず、地方をウロウロしつつ、結局は都内で違法なウリを始めていた。Twitterや出会い系アプリを利用し、個人で客を取るいわゆる売春だった。1日、1~3人程集客ができて、店を通さない分、客から受け取ったお金がそのまま利益となった》 その活動の中で、淫らなパーティを主催する人物と知り合い、パーティ界隈の人々とつながりを持つようになった。被害者男性と出会ったのはちょうどその頃だった。伊藤被告は事件について、こう綴って手記を締めくくっている。 《その後のことは、裁判にかかわってくるため書けない。だが、こうして書いてみると、事件の始まりはずいぶんと前だったようにも思えて仕方がない。被害者の方について等についても書けないが、私は自分自身に散々な問題を抱えており、私がこのような情況にいるのは、事件自体が問題ではなくキッカケにすぎないのだと思う。》 伊藤被告は今回の事件について、面会でも手記でも一貫して以下のように反省の弁を繰り返していた。 「私が刺したことで警察の方に迷惑をかけたり、周りの友達に心配させたりしたことは申し訳ないと思っています」 別の手紙では、心の叫びのように以下の言葉が書き記されていた。 《もう誰も私を愛してくれない。誰からも必要とされていない。誰も私に興味がない。死ぬことさえできない。何もできない。全部、私が悪い。苦しい》 初公判は、6月28日に行われる予定だ。 取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
集英社オンライン