出産経験がない人は、婦人科系の病気リスクが高まりますか?【高尾美穂先生のお悩み処方箋】|Mart
出産を経験していないと、婦人科系のリスクが上がるという噂を聞いたことはありますか?出産の有無で病気のリスクが変わってしまうのか、もし本当に違いがあるのならどのように対策していったらいいのかなど気になるところですよね。そこで、相談者の心に寄り添った優しいアドバイスが人気の産婦人科医・高尾美穂先生に、詳しく教えていただきました!
悩める女性の心を軽くしてくれる!高尾美穂先生
【高尾美穂先生】 産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター・ ヨガ講師。産婦人科専門医として、女性の健康をサポートしつつ、それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った治療を提案する一方、スポーツドクターとして、女性のプロアスリートへのサポートも行っています。雑誌やテレビほかさまざまなメディアでも、女性のお悩みへの優しいアドバイスが好評です。
生理の回数が多いことは、いくつかの病気のリスクに
Yさん:現在45歳で子どもはおらず、出産経験はありません。以前に雑誌などで、出産経験がないと婦人科系の病気になりやすいと見かけました。これって本当なのでしょうか? 高尾先生:そうですね。出産経験のない人は、ある人よりも、乳がんや子宮内膜症のリスクは高いと言えます。 Yさん:本当だったんですね!どうしてリスクが高くなるんですか? 高尾先生:乳がんと子宮内膜症の発生には、エストロゲンが深く関わっています。エストロゲンの影響を長く受けるほど、乳がんや子宮内膜症の発症リスクは高まります。生理がある間は、卵胞期・排卵期にエストロゲンの分泌量が非常に多くなります。 Yさん:出産経験があるとリスクが下がるのはなぜですか? 高尾先生:妊娠、授乳期間中は生理が止まります。長い人であれば、1年半くらいの間ストップすることも。もし生涯で3人のお子さんを出産した場合、合計すると4年程度は生理のない期間を過ごすわけです。そのため出産経験のない人よりも体がエストロゲンにさらされる期間が少なく、乳がんや子宮内膜症が出産経験のない人よりも低いと言えます。 Yさん:なるほど。では出産経験のない人ができる対策はありますか? 高尾先生:出産経験がある人よりも、リスクが高いと思ってケアすることは大切です。まずは定期的な検診を受けることはもちろん、ほかの病気への対策と同様に、適度な運動で適正体重を維持して肥満対策をする、タバコは吸わない、お酒を控えめにするなどを心がけるようにしてください。 Yさん:ちなみに、出産を経験すると生理痛が軽くなるという話も聞きますが、こちらは本当ですか? 高尾先生:そうですね……。例えば子宮内膜症は子宮以外の場所で子宮内膜などの細胞が増える病気。妊娠や出産でエストロゲンの影響が小さい期間は細胞が増殖せず、病気の進行が止まるので症状が改善している状態だと思います。子宮内膜症の一種のチョコレート嚢胞も、妊娠中に小さくなって目立たなくなることもありますね。 Yさん:そういうことなんですね。 高尾先生:そのため生理が再開してすぐは痛みがなく、軽くなったと感じるのかもしれません。ただ生理が始まるとまた大きくなったり症状が進行したりして、結局痛みも元のように戻ることが多いと思いますよ。