新型マセラティMC20チェロが、フェラーリとは違ったワケとは? 新世代のイタリア製スーパーカーに迫る
マセラティが手がけた新しいスーパーカー「MC20チェロ」は、驚くほど高性能な1台だった!今尾直樹がリポートする。 【写真を見る】新型MC20チェロの内外装がカッコいい!!!
マセラティ史上最強のエンジンを搭載
4月某日、袖ヶ浦フォレストレースウェイで開かれた“ネットゥーノ”のテストデイで、新型「グラントゥーリズモ トロフェオ」の次にステアリングを握ったのが、MC20チェロだった。試乗車は特別仕様車のプリマセリエ・ローンチ・エディションで、私も昨年、箱根でほんのチョロっと乗ったことがある。 ということはさておき、テストデイを設けたマセラティジャパンの狙いは“ネットゥーノ”を改めて味わうことにある。2020年、MC20の心臓として登場した愛称“ネットゥーノ”は、F1由来のテクノロジー、プレチャンバー(副燃焼室)を量産車用として世界で初めて実現している。レーシングエンジンとは異なり、発進・停止を繰り返し、渋滞にも備えねばならない公道用ゆえ、排気量2992ccのこの90°V6ツインターボは、ふたつの燃焼特性を持っている。 それがMTC(マセラティ・ツイン・コンバスチョン・チャンバー)と呼ぶもので、気筒ごとにイグニッション(点火プラグ)とインジェクター(燃料噴射装置)をふたつずつ備えている。インジェクターのひとつはポート噴射で、低回転でトルクを出すための燃焼に使われ、もうひとつは高回転時に燃焼室内に直接噴射する。 このふたつの燃焼特性の使い分けは、マセラティジャパンの担当者の方によると、「自転車で、スタートや坂道では立ち漕ぎが必要なときの状況ではポート噴射、走り出してペダルを速くまわすようなときに使うのがダイレクト噴射」ということになる。後者ではピストンの圧縮とともに燃料が直接噴射されたら、ふたつめのスパークプラグと、そのプラグの先端に設けられた小さなプレチャンバーで燃焼させた炎を、プレチャンバーの横方向の穴から燃焼室に噴射して一気に燃焼させる。“ネットゥーノ”は、状況に応じて、このふたつの燃焼特性を瞬時に切り替える。 MC20にミドシップされる“ネットゥーノ”はドライサンプで、マセラティ史上最強の最高出力630ps/7500rpmと最大トルク730Nm/3000~5750rpmを生み出す。最高出力630psは、「MC12」と、おなじ数値だけれど、あちらはV12で6.0リッター。ネットゥーノと較べるとシリンダーの数と排気量は倍もある。じつはこれもマセラティジャパンの担当の方が語ったことばなのですけれど、そう考えると、なるほど、いかに技術が進歩したのかがよくわかる。トルクはしかも730Nm。MC12の652Nmを圧倒している。まさにマセラティ史上最強のエンジンなのだ。