〝期待外れ〟を埋めてくれた〝予想外〟:総まくり2024年
2024年もたくさんの映画が、私たち映画ファンを楽しませてくれました。ひとシネマのライター陣が、映画、動画配信サービスの作品から今年の10本、そして2025年への期待を語ります。 【写真】久方ぶりの出来で快哉! 「スユチョン」(ホン・サンス監督)の一場面
髙橋佑弥さんが選んだ今年の10本
「コット、はじまりの夏」(コルム・バレード監督) 「ダム・マネー ウォール街を狙え!」(クレイグ・ギレスピー監督) 「PLAY! 勝つとか負けるとかは、どーでもよくて」(古廄智之監督) 「FLY!/フライ!」(バンジャマン・レネール監督) 「ラジオ下神白 あのとき あのまちの音楽から いまここへ」(⼩森はるか監督) 「恋するプリテンダー」(ウィル・グラック監督) 「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」(アレクサンダー・ペイン監督) 「エイリアン:ロムルス」(フェデ・アルバレス監督) 「ビートルジュース ビートルジュース」(ティム・バートン監督) 「スユチョン」(ホン・サンス監督/東京フィルメックス)
ホン・サンス「スユチョン」に快哉
映画祭上映作や配信/DVDスルー作品を対象外として劇場公開作を選ぶ、というのが例年自分に課している条件なのだが、今回は迷った末に映画祭上映作を1本だけ入れている(順不同/公開日順)。東京フィルメックスで上映されたホン・サンス監督作「スユチョン」がそれ。もともと好きな作り手なのだが、にもかかわらず近作は好きになれないものも少なくなかったなかで、久方ぶりの好ましい出来で快哉(かいさい)を叫んだ。「草の葉」「川沿いのホテル」以降では最高作ではないか。 2024年を振り返ったとき、監督由来で期待を膨らませて見に行った作品群が予想を上回ることが少なかったという印象がある(あえて監督名は挙げずにおくけれども)。その落胆を、期待せずに見た多くの充実した作品が埋めてくれた。
映画ライター 髙橋佑弥