介護保険の「高額介護サービス費」をご存じですか? そのサービス内容や、対象になる・ならない事例を紹介
介護保険の利用者数は年々増え、厚生労働省によると、その数は2025年には年間600万人を超える見通しです(※1)。 利用者数が増え続けるなかで、給付額の増加への対応として、保険料の増額改定や利用者の負担額も見直され、利用者の負担額は当初の一律1割から、所得区分別に1~3割になりました。介護にまつわるお金について悩みを持つ人も多いでしょうが、使える制度は活用していきたいものです。 今回は、介護保険の「高額介護サービス費」について、その制度の内容を見てみましょう。
介護保険の高額介護サービス費とは
介護保険の利用者が自己負担する介護サービス費は、所得区分に応じて1ヶ月の負担限度額が決まっています。 限度額を超えると、超えた分は申請により払い戻しを受けることができます。これを「高額介護サービス費」といいます。 同じ世帯に複数のサービス利用者がいる場合は、原則、世帯の自己負担合計額で計算されます。 図表1 高額介護サービス費の所得区分別負担限度額
公益財団法人生命保険文化センター「公的介護保険で自己負担額が高額になった場合の軽減措置とは?」(※2)より引用 介護サービス費には、高額介護サービス費の対象になるものと対象にならないものがあります。 ■対象となる介護サービス費 以下のサービスは、高額介護サービス費の対象に該当します。 ●居宅サービスと施設サービスを利用した際の利用者負担額 ●自治体等が行っている「総合事業」の介護予防訪問サービス・介護予防通所サービス等の利用者負担額 ■対象とならない介護サービス費 以下については、高額介護サービス費の対象には該当しません。 ●介護施設での食費・居住費や日常生活費 ●要介護度等に応じて定められる、利用上限額を超えた分の利用者負担額 ●福祉用具購入、住宅改修、ミドルステイ、緊急ショートステイ、緊急一時保護サービス、住民主体訪問サービス、フレイル改善通所サービス、一般介護予防事業の利用者負担額 ■給付方法 高額介護サービス費の給付を受けるには、各自治体の担当部門への申請が必要ですが、その受け取り方には「本人償還」と「受領委任払い」の2つの方法があります。 「本人償還」は、利用者負担額を本人が全額支払い、後から利用者負担限度額を超えた部分の償還を受ける方法です。そのため、一時的に立て替え払いが発生します。 「受領委任払い」は、利用している介護保険施設の同意が必要ですが、高額介護サービス費が直接施設に支払われるので、本人は利用者負担限度額を施設に支払えば済みます。 なお、介護の手続きや実際の活動は、遠隔地に住む家族が分担して行うことも多いので、申請もれなどが起きないよう注意が必要です。 また、給付を受ける権利の時効は自己負担額を支払った日の翌日から2年になっているため、申請が遅れないよう注意が必要です。