葛飾区3度目の正直。南北走る貨物線転用、次世代路面電車実現に意欲の背景
公共バスによる対応の限界
葛飾区がバスの社会実験を実施して、新しい路線を設定するのは今回が初めてではありません。2014年にもバス社会実験を実施し、その結果を踏まえて金町駅と新小岩駅とを結ぶ“新金01系統”が誕生しています。 また、妊婦さんが健診等のため、病院に通いやすくしたり、買い物といった外出時の負担を軽減する“マタニティパス”の交付も昨年から始めています。 こうした区民の“足”に関する政策に力を入れている葛飾区ですが、輸送量の小さいバスでは需要を満たすことにも限界があります。区内の主要幹線道路は道路渋滞が激しく、バスの運行本数を増やせば道路の混雑はさらに深刻化する恐れもあるからです。また、近年はバスの運転手は慢性的な人手不足に陥っており、需要があってもバスを増便しにくい状況になっています。 そうした背景から、葛飾区は輸送量が大きく、道路渋滞も起こさないLRTの整備を検討することになったのです。
過去にも検討されてきた新金線の旅客転用
「区が新金線の旅客転用を検討したのは今回で3回目になります。1度目は1993年頃です。このときは、路面電車ではなく、普通の電車を走らせることを検討しました。当時の新金線は、まだ運行本数が多く、旅客化転用するために新金線の複線化が検討されました。新金線は単線ですが、複線化できる用地が確保されているのです。しかし、費用的に難しいことがわかり、断念しました」(同) 新金線の旅客化が再び浮上したのは、10年後の2003年前後です。この頃になると、新金線を走る貨物列車は少なくなり、事業費が少なくて済む単線での旅客転用が模索されました。 「新金線は金町駅を出ると南へとカーブします。そこで、国道6号線と平面交差しています。国道6号線は、一日平均で6万台が通行する幹線道路です。新金線に電車が頻繁に走ると、国道6号線が渋滞する恐れがありました。立体交差も検討されましたが、工事費は膨大になります。そうした事情から、2度目の検討でも新金線の旅客転用が見送られることになったのです」(同)